Which is right ?⑤
胸のポケットから手帳を取りだして、今日あったことをメモしておく。忘れないように、そして後からでも分かりやすく書いておく。自分の頭の中の考えをまとめながら、整理しながら書いていく。
でも、それでピースが足りるとも思えない。
「零さん、あの人を偽者って証明する手段はあるんですか?」
「今は、まったく。でも、さっきの晶人の話を聞く限り、この屋敷の中に何かありそうだなあ」
「だとして、それはなんでしょうか?」
「分からない。でも、君は何か知らないの?」
一瞬彼女の顔が曇ったようにも見えたが、すぐに普通の表情に戻った。
「これと言って思いつくことは、そもそも22年になるんですよ。この家を離れてから、もうすでに」
「そうだよね。でも、何か事件があるとして、その犯人がもしミミだったら……それを証明できたら」
「なら、ミミが偽者と納得してくれるでしょう。でも、それを彼女だって分かっているはずですから、簡単にボロを出してくれるとは考えにくいですね」
「――そうだね」
僕はまた思考の海に戻る。
部屋から見える群青色のように、穏やかな脳の中の海には、真新しい心理の魚はまだ見えない。もう日は深く沈んで、空は紫色に輝いていた。
「お食事の準備が整いました、ハルミさま。零さま」
ドアの外からメイドの千尋の声がした。
もうそんな時間か――と思って、ネクタイを締め直す。
さて、と立ち上がり降りていく。
ダイニングに集まり、夕食となる。
全員が昨日の並びで席に着き、僕はキャストとして主人の真向かいに座らされた。細長い長方形の短辺に向かい合う僕と武蔵は、一度軽く視線を交わしたが、武蔵はすぐに食事へと目を落とした。
武蔵から見て左手に、理恵とミミ、深雪が。右手に晶人、夏彦、そしてハルミ。
ハルミは一応家族に混ざって座るも、席は最も下座にされたままだ。
ミミは何も言わずにハルミを見て、厳しい顔になったがすぐに隣の理恵に話しかけ、笑うのだった。
「では、食事に致しましょうか」
武蔵の一声で、皆銀器を取った。
料理をふと眺める。前菜のタイのカルパッチョも、メインの肉料理も、スープもすべてがテーブルの上に出そろい、量も多い。スープに至っては、ゴロゴロと魚の切り身が入り、まるでブイヤベースだ。だが、飲んでみるとしっかりとしたトマトベースのスープのようだった。しかも、旨い。このレベルの料理を作れる料理人は少ないだろう。
ふと思うのは、一応フランス料理を元にしているメニューで、なぜコースにしないのかということだ。
「鏡花さん、少しいいですか?」
水を注いで回る執事に声を掛けた。
「はい。何かご用ですか?」
「これは鏡花さんが作っているんですか。ここまで美味しい料理は、なかなか出逢えるものではないのでお礼を」
「恐れ入ります。一流と呼ばれる店や本場で修業したかいがあります」
「そうですか。でも、これをコースにしない理由は何故ですか。一辺にテーブルに並べるなんて」
そこで執事は水の入ったデカンタをテーブルに置き、笑って言う。
「コースにした方が格調高く、高価であり、優雅に見えるでしょう。でも、料理の本質とは別です。真の料理とは、舌をもっとも喜ばせることだと私は考えていますので」
それには感服するしかなく、再びお礼を言った。
肉料理は、食べてみるとラムのようだが、臭みは完全に消えている。
溢れる肉の味。濃いワインのソース。付け合せも色鮮やかに添えられていた。
本場でも修行した料理人だというが、それだけの腕でないことは確かだった。かなりの腕を持つ料理人でもある鏡花も、千尋と二人でこの大きな屋敷の仕事をこなすとは只者ではないことは確かだ。
その動きをジッと見ていると、夏彦が声を掛けてきた。
彼はとても小食らしく、既に料理は片づけさせて、酒ばかり飲んでいた。
「神園の人間と聞いたんですが、どんなことをしてるんですか? 少し聞かせてくださいよ」と酒臭い息で近づいてくる。
少し彼を嫌いになったが、表情を崩すことなく返答する。
「たとえばどんなことです。社の重要なことは教えられませんし、いろいろな部署の指揮を取っているので分野を絞っていただかねば」
「面白い話です。どんなことでもいい、面白い話を聞きたいですね」
顔は赤いし、呂律も回らなくなってきている。泥酔までは行かないが、だいぶ酔っているみたいだ。僕は執事を呼ぼうかと思ったが、すでに彼のテーブルの酒は水に替えられていた。
「面白い話ですか。じゃあ、変わり者の話をしましょう。うち(、、)でもっとも変わった人間の話を」
「イイですね」と夏彦はニヤリ。
隣では晶人もこっちを向いた。
「その人物の名は、ナイ。と言っても、ジョン・ドゥってことではなく、
そう話したら、ハルミは少し笑った。
「――その人物は、神園グループの中でもとてもユニークな部署に一人で引き籠ってるんですよ。神園グループの探偵社として一人で生活しています。その事件の話でもしましょうか。彼は悪運が強いので、凶悪な事件などが多々舞い込むんです」
僕は頭の中に彼を思い描くように、話を始めた。
「……という証拠から、犯人はこの人であると考えたらしいのですが、でも――」
そう言って目の前を見回すとすっかり食事は済んでおり、全員が僕の方を見ていた。
時計はもう30分も過ぎていて、すっかり話しこんでしまったらしい。
「――ああ! もうこんな時間に。すみません、長々と。食事時にあまり相応しくない話まで」
「いやいや楽しかったですよ」
「ええ、もっと聞きたいですわ。どうかこの後もリビングで話をしてもらえませんか?」
そう言ったのは、理恵で。
彼女の顔は、ここに来てからもっとも華やいでいた。
「私はもう寝てしまいますが、また聞かせてください」
と武蔵はダイニングを出て行く。
そして、「私も」「私も」とミミや深雪は出て行ってしまった。
「では、リビングへと行きますか」
リビングは2階の奥、エントランスの反対側の辺にあたる。
そこにはグランドピアノや大きなテレビが揃い、バーカウンターまで設置されていた。そこで家族のみんなはテーブルを取り囲み、バーカウンターから飲み物を取って来てソファへと座った。
「神園さんは、何か飲みますか?」と夏彦が酒を持ち聞いてきた。
「いえ、お酒はちょっと……まだ未成年ですから」
夏彦は驚いた顔をして、酒瓶を置いた。
「零は、僕と同い年だよ」と晶人。
「まだ十九歳か」と夏彦はグラスに酒を注ぐ。「それで会社の社長をしてるんだからね」
僕は頭を掻く。
「照れてるんですか?」
僕の肩に巻き付いてきたハルミは、見たことがないほど顔が赤い。手にはウイスキーグラスを持ち、彼女が酒を呑んでいるみたいだった。頬が赤く上気して、艶かしい。
「酔ってるの?」
「ええ。えっと、何、照れてるんですか?」
「……」
「顔紅くして、可愛いー」
彼女を優しく解いて、話を続ける。
いつの間にか、僕の前に置かれていたグラスを飲んでいた。
そこから記憶は一切ない。
◇
夢だ。そう自分で理解した。いつもの夢だと。
「兄さんは、頭が悪いね。ああ、そんな意味じゃないよ。勉強が出来るとか出来ないとか、謎が解けるとか解けないとかじゃない。なんというか、要領が悪いよね。ハルミさんを好きになるとか、社長の座を降りても結婚したいとかさ。今の地位でも出来ることを、それを捨ててまでもしたいっていうのは、馬鹿のすることだと僕は思うよ」
――それでも僕は……
「それでも――って、兄さんは何をするんだい? 自分の全てを捨てて愛の為に生きるとでも言うのかい。クダラナイね。そんなことが出来る人じゃないと思うけどな。兄さんは人の為に死ぬことは出来ても、人の為には生きれないタイプの人なんだよ。ボクも人のことは言えないけどさ」
――何が分かるんだ、オマエに。僕のことが。
「わかるよ。お互いに探偵なんて罪深い職業をしているんだからね。人の秘密を暴き、人をどこまでも追い詰める。悲しい仕事を好き好んでやっているんだよ。そんな人間は地獄に堕ちて当然だし、それが人を救うためにやっていることだなんて思ってる。そんなこと誰も思ってやしないのに。違うかい?」
――救われた人が、思ってくれるさ。
「どこのだれが、救われたんだい。この『
兄さん、人の為に生きるなんて不可能なんだよ。この世界で一番罪深いのは、この世で最も罰するべきなのは、『愛とはなんて素晴らしいものか』を解いた人間だよ。ボクはもう人を救おうなんて思わない。自分が満足すればそれでいい。じゃあね、兄さん。もう会いたくないよ、ボクは」
何を言われようと、僕は正しくならねばならなかった。弟とはあの事件以来あっていない。僕は弟の言葉を否定せず受け止めるしかなかった。
それを否定されて何が出来る。否定を否定しようとして、何も出来ない現実だけがそこにのさばり、居座る。僕はあまりに無力な存在だという現実を見せられ、そして弟にさえ敵わない凡人であることを痛感させられた。
痛々しいほど、傷つけられた。
僕はうなされて、夢から浮上する。
寝汗で湿ったシャツを脱ぎながら時間を見る。
カーテンを開けてみるとすでに日は高く上っていて、ベッドの横にあった台の上の時計は午前9時を回っていた。ハルミはすでに隣にはいなくて、たぶん下に降りて行ったのだと思う。もう朝食の時間も終わる頃だ。
何度も点けては切ってと繰り返したエアコンが、涼しげな風を微弱ながら吹き出していた。エアコンを点けっぱなしにしておくと風邪を
美味しい料理を食べそびれたなと思いながら、まだ大分重い頭を捻って首を解す。熱いシャワーで無理やり眼を覚まし、着替える。
でも、空腹に勝てず、覗くだけ覗こうと思う。
部屋を出ると、すぐ目の前のリビングからピアノの音がする。高すぎるとも思える防音性に驚いて、一度ドアを閉めて確かめてみるが、ドアを閉めてしまうと本当に音が消えてしまう。
もう一度ドアを開き、食堂ではなくリビングのほうへと足を向ける。
リビングを覗いてみると深雪がピアノを叩いている。彼女の側まで言ってみる。綺麗な音だった。
「っ……」
僕の姿を見た深雪は、ピピンと音を外す。
しかし、彼女は一度目を閉じて深く息をしたあと、気を取り直したように普通に挨拶を口にした。それは少しまだオドオドとしていたが、彼女が慣れようとしている気持ちの表れに見えた。
「お……おはようございます、零さん」
彼女は止めた手を再び動かして、ピアノを弾き始める。僕も「おはよう」と返したが、彼女の方はただ黙々とピアノを弾き続ける。今日は白のドレスだったけど、昨日とは少しデザインが違って、今日は小さなスワロフスキーが飾られている。昨日の晶人の話だと何かあるようだが、彼女の口から語る気はないのだろうか。
「れ、零さんは、朝食取らなくていいんですか?」
「ああ、食べてくるよ。まだ残っていればだけど。君は?」
「私は良いんです。ここでピアノを弾いていますから」
指が鍵盤を自由自在に動いていく。鍵盤を叩いて、音楽が鳴る。音が奏でられる。彼女の小さな指が、壮大な曲を5本の糸の上に紡いでいくのだ。
人の素晴らしい力、人の無限な可能性だと感動する。
僕はその曲名を聞きたかった。
「なんていう曲?」
「『夜想曲・第二番』です」
彼女は目を瞑り、音楽の中へ入って行った。
哀しい音だ。
夜を想う、曲。
彼女の弾く曲。
寂しい夜は終わりを迎え、次は明るい朝が来る。でも、なんだろうか。僕には音楽というものがよく分からないが、彼女の雰囲気はとても寂しそうだった。曇り空の灰色が、その顔を暗い影を落としてしまうのだった。
どこか、悲しい音が包みこまれているような気がして……
リビングの奥の窓からは、青い空が見える。だが、疾い雲が流れてきて、徐々に空を灰色に汚していった。これは雨になるかもしれない。
けれど、強い空腹を感じて、ダイニングへと降りて行った。
食事が終わった所らしく、出てくるみんなと鉢合わせる形になった。少し長すぎる気もしたのだが、まあ話をするほどに関係が深まったのならそれもいいだろう。院宣家の人々は、談笑しながら食堂を出てきた。
僕は満腹そうなハルミに「起こしてくれれば良かったのに」と言ったのだけど、「起こしましたよ」と返されてしまった。
「何回か起こそうとしたんですよ。でも、全然起きなくて――諦めてしまいました」
「ああ、ゴメン。しかし、そこまで朝が弱い方じゃないんだけどね」
「零さんも疲れてらしたから」
起こされた記憶がない気がするが、僕の記憶が定かでないから反論も出来ない。
だから、正直に「ゴメン」と謝った。
すると、僕の腹の虫も限界のようで、ぐうと怒りの声を上げる。
その音が聞こえてしまったのか。鏡花が近づいてくる。
「何かお作りしましょうか? 零様の御食事は、あまり残っていないのですけど、何か簡単な物で良ければお作りしますので」
「ええ。お願いします」
僕は端のドアに最も近い席に座り、朝食を待った。一番の下座で、ドアに近い。
すぐに千尋がカップに入った珈琲を持ってきて、僕の目の前に置いた。ミルクと砂糖は断り、ブラックのままの珈琲に口を付けた。爽やかな酸味はキリマンジャロ。苦味も香りも口の中を草原の空気のように通り抜ける。朝という時間に相応しい味に、僕の気は完全に抜けていた。
バタンといきなりドアが開いた。
あまりに大きな音に僕は椅子から滑り落ちた。腰を強く床に打ち付けてしまい、痛みに顔を
そこに立っていたのは、晶人だった。
「ねえ、少し話をしようか」
僕はまだ目を丸くしていて、返事がすぐに言葉にならなかった。僕がようやく落ち着いて返事をしようとする前に、彼はツカツカとやってきて僕の前の席に何も言わずに腰を掛ける。
「まあ、待っている間でいいよ」と優雅に彼は椅子に座り足を組む。
でも、すぐに僕の前に朝食が運ばれてきて、正面に晶人は座ったまま残った。
「いただきます」
バターがたっぷりと塗られたトーストに、ベーコンと目玉焼き。それに彩り豊かに野菜が載ったサラダが添えられている。サラダの横にはカレーなどを入れるソースポッドが置かれているが、今入っているのはカレーではなく自家製のドレッシングのようだった。
僕はちょっとずつパンを齧ったり、サラダを食べたりしながら、晶人が話をするだろうと思って待っていた。でも、彼はすこしも話す様子を見せずに、僕が食べ終わるのを待っているようだった。
「ねえ、晶人。なにが聞きたいの?」
「食べ終わってからでも良いよ。僕は待ってるからさ」
いや、気が散るとは言えず、出来る限り僕も食事を急いだ。
食事を済ませると、僕たちは中庭に来た。昨日、殴り合った場所に。
この前降りた方の廊下から、僕らは中庭に出る。
屋敷の中心にあるこの場所は、3階建の建物で影が出来る部分がある。でも、そこは涼むにはちょうどいい場所とは言えない。真夏のような暑さが、草木から立ち上る湿気を温めサウナ状態である。30度を超えた気温と高い湿度だけではなく。風が吹き抜けることのない場所だから、どうしても熱気が溜まってしまうみたいだ。
白いテーブルと椅子は揃っていて、話をすることは出来ようになっている。が、これをおくのは、無意味な気がする。
何もしなくても、汗が額に流れた。
「えっと、何の話?」
「詳しいことは言えないさ。でもさ、深雪のことを頼みたいんだよ」
淡々としている口ぶりだった。強がっているのかもしれない。そして、そんな態度を見ると、何かを隠しているような気がする。そこに深雪に対する大きな想いは見えても、大切な部分はどこか霧の中にあるようだった。寒々しいほどの嘘――いや、嘘ではない。ただ真実ではないのだろう。
正しいと思えるだけの黒い箱。
中の猫の生死は不明。
彼は「言えない」とばかり言う。
僕がイエスかノーかを答えないでいると、晶人は言葉を続けた。
「この真実――と言えば良いのかな、それは、僕は本当に何も言えない秘密のことなんだ。だから、部外者である君ならば、どうにかできるかなって思うんだよ」
彼は、目の前の空に神や天使を見たかのような、どこか達観したような眼をして、じっとその眼を中庭の中心を向ける。
そこには昨日見た石碑のような物が置かれていて、木陰を通り抜けた一瞬の光明が、黒い御影石の墓碑を煌かせていた。その表面には十字架が刻まれている。
「あれのこと?」
「そうだね、『供物』だよ」
僕の眼はそれに釘づけになっていた。
悔しくも、微かに当たっていた光が厚い雨雲に遮られてしまった。黒い石が曇り空で漆黒に染まって、ポツリポツリと雨が降り出した。鴉の塗れ羽のように艶めく石を悲しくも僕から引き離す。僕がその『供物』と呼ばれた石碑を確認する前に。
このままでは濡れてしまうと、僕たちは部屋の中に入った。確認できない悔しさを覚えながら、仕方なく中庭の戸を閉めた。
中庭に佇むそれが、どこか寂しそうに雨の中で冷たく笑っている。
雨は急に土砂降りのスコールになった。日本本土ではとても見ることの出来ない大粒の水滴に、服は絞れるほどに濡れた。
着替えるため部屋に戻ろうとしたとき、晶人は言った。
「たとえば、僕が死んでしまったら君はどうしてくれる」
「なんで? この島の真実とは、そんなに恐ろしいもの?」
僕は少し微笑みながら聞いたが、彼の顔は微塵も笑っていない。
「この僕の死を悲しみ、嘆いてくれかい? そしてその死に大いなる謎があるとしたなら?」
「もちろん。そして、その時は、僕がそれを解いてみせるよ」
彼は「ハハ……」と小さく笑って見せた。
どこか寂しそうに。
曇り空のような、陰りがあった。
「そうか。なら、頼んだよ。僕が僕であり、僕が君の友達であり、僕が彼女の家族であるのだということを、僕を確かに生きていたのだということを証明してほしい。僕はたいそうな人間ではないけど、僕が死んでも、僕は生きていたと言いたいんだよ」
「何かあるの? 何か大きな問題が……」
「君が気にすることじゃないさ。でも、大きな謎をそのままにしないでほしいんだ。それだけだよ、僕がこの罪に塗れた世界で臨むのは」
そして、静かに自分たちの部屋に入る。そこで僕はなんだか寂しくなる。
彼が何も口にしないだけで、どこか彼の人生も生き方も悲しいものだったではないか、大きな後悔があるような気がしたのだ。でも、ここの人間は島から出ることなく生きているらしい。
だから僕は、彼がこの島から出ないままに生涯を終えるのを後悔しているのだと思った。
廊下に寒さが走った。風邪を引くといけないと思い、僕は部屋に入ってシャワーを浴びた。部屋にハルミの姿はなく、どこかに出かけているようだった。他の部屋だろうか、一階には遊戯室というのもあるらしいから。中庭の出入り口のある、屋敷の左の一階がそれであるらしい。
静かな雨音に代わって、窓の外はまた青く輝きだした。
でも、まだ遠くの空は濃い闇に覆われたままだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます