第12話


 ダンとデイブは酒場での宣言通り1週間後にダンジョンをクリアする。ボスを倒してモレスビーのギルドに戻ってくると既にダンジョンクリアが更新されていた。


 2人はまずはカウンターに向かい受付に座っていたニムの前にいくと彼女は既にダンジョンがクリアされたのを知っていて


「ダンジョンクリアおめでとうございます。こちらにどうぞ」


 そう言って2人をカウンターの奥に案内する。部屋に入るとすぐにギルマスのコーエンが入ってきた。


「早速のクリアか。まぁお前さん達ならそんなもんか」


「大したことなかったよ」


 そう言いながらデイブが魔石、片手剣、そして指輪をテーブルの上に置いた。コーエンはニムにこれらの鑑定を頼むと


「それでボスは何だった?」


「トロルだったよ。でかいのが1体。剣と盾を持ってた」


「強さは?」


 そう聞かれてデイブはダンを見てどうだろうかと聞いてきた。


「ダンジョンの途中のフロアで倒していたレベルと一緒かちょっと強いくらい?いずれにしても相手が弱すぎてわからなかった。殆ど戦闘なんてしてないしな。ボス部屋に入るとトロルが何か言ってきたけどうるさかったから腹と首に剣を振ったらそれで終わりだったよ。無理やりランクをつければランクSの下位くらいかな。雑魚だったよ」


 ダンが言うとデイブが


「そう言う事だ。つまりボス戦では俺は何もしてない。部屋に入ったらダンが1人で倒したよ。部屋に入るとトロルが俺達の言葉でよくここまで来たとか生きて帰れると思うなと言い出したからウザイなと思ってたらダンが黙らせて終わったよ」


 聞いていたコーエンは分かってはいたがそれでもまた内心でびっくりしていた。Aクラスより上のボスを弱すぎたとか雑魚だとか1人で倒したとか普通ならあり得ない話だ。


 ダンもデイブも歯応えがなかったのが丸わかりの表情をしている。


「まぁあのダンジョンはぬるい方なんだろ?ボルケーノでも普通に倒せると思うぜ」


 デイブが言うとそうだよなとダンも言っている。コーエンはそんな2人のやりとりを聞いているとニムが部屋に入ってきた。


「魔石はSクラスのトロルの物でした」


 ニムが言うと、


「やっぱりそうだよな。雑魚だったよ」


 とデイブ。


「あと今回はSだったがこの大陸では味方も敵もS以上のランクはない。だからSクラスより強かったとしてもSクラスと呼んでいる」


 コーエンが説明した。


「ややこしい話だな」


 とデイブ。


「ただ魔石を見るとその強さがわかるからな。魔石の買い取り価格は時にクラス通りとはならず高く買い取ることもある」


 コーエンの説明で納得した2人。片手剣はどうやら今持っているのよりも程度が低いらしい。指輪は回復魔法が増える指輪ってことでこれはデイブが持つことにした。魔石と片手剣をギルド買取にすると言うとニムがそれらを持って部屋を出ていった。


「ところで」


 ニムが部屋を出て行ったタイミングでコーエンが2人を見て


「お前さん達、悪いがちょっと王都に顔出してくれないか?」


「王都に?」


「ああ。王都のギルドに行って欲しいんだよ」


 そう言ってその背景を説明する。ノワール・ルージュについてコーエンがかくギルドにレポートを出したところ王都のギルドから一度彼らに会いたいという話が来ているのだという。


「王都のギルドはまぁこの国のギルドの本部みたいなもんだ。そこでギルマスをやっているチャールストンって男から手紙が来てな。お前さん達の話を詳しく聞きたいのとその実力を見てみたいんだとさ。うまくいきゃあ一気にランクが上がるぞ。それに行ってくれれば俺の顔も立つ」


 コーエンの話を聞いた2人は顔を見合わせデイブがどうしようかとダンに聞いた。


「王都のギルドに顔を出して、場合によっちゃああっちで模擬戦をする。それだけでいいのかな?」


「詳しいことは書いてないがおそらくダンが言った程度だろう」


 ダンの言葉にオーエンが答えた。


「なら一度行ってみるのもいいかもしれないな。ランクには興味はないが俺達がいくことでギルマスの顔が立つんならいいんじゃないか。それに一度は王都にも行きたいと思ってたし」


「確かにな。せっかく誘われているんだし顔を出してみるか」


「そうか」


 そう言ってコーエンは簡単な地図を持ってきてテーブルの上に広げるとここモレスビーから王都への道のりを説明する。


「だいたい徒歩で30日前後だろう。途中には宿泊できる村や街がある。王都のギルドにはこちらから連絡を入れておく」


 地図を指差しながら説明するギルマス。


「わかった。明日か明後日には出る様にするよ」


 魔石と片手剣の代金を受け取った2人が受付に戻るとダンジョンクリアした2人を待っていたこの街の冒険者に誘われて酒場に移動する。


「モレスビーにやってきたと思ったらいきなりダンジョンクリアだもんな」


「ラエの要塞で見てた時から相当やるとは思っていたけどそれでもすごいぜ」


 酒場であちこちから声がかかってくる。それが落ち着いたタイミングでマリアンヌが聞いてきた。


「ボスはどうだった?」


「13層や14層で出るトロルよりは少し上のクラスだ。ナイトタイプかな。片手剣と盾を持ってたよ。ジャンならガチで受け止められると思うぜ、それほど強くないしな」


 デイブの説明をじっと聞くボルケーノの面々。


「13層でAクラス+の単体、14層で複数体。このあたりでしっかりと鍛錬すればボス戦自体は問題ないよ」


 前の大陸と同じ様に2人は自分達が攻略したダンジョンの情報を惜しげもなく教えていく。話を聞き終えると参考になったというボルケーノのメンバー。


「それでこれからどうするんだ?」」


 とジャンが聞いてきた。


「ギルマスから王都に行ってくれと言われたから行ってくるよ」


 デイブが言ってギルマスの部屋で聞いた話を皆にする。


「王都のギルマスが会いたいと言ってるのなら会った方がいいわね。この国のギルドの頂点に立ってるって話だし、ギルマスが認めたらランクアップするかもよ」


 マリアンヌが言った。


「ランクは気にしていないんだが王都には行ってみたいからな」


 デイブがそう言うと隣でダンも頷く。


「王都にもAクラスのパーティがいる。普段は郊外のダンジョンに篭ってるって話だ」


 クラウドがそこまで言ったところでちょっと待てとデイブが言った。


「王都に何でAクラスのパーティが必要なんだ? それより最前線で獣人相手にした方がずっといいだろう?」


「確かに。王都周辺のダンジョンを攻略するよりも国境を取り戻す方が大事じゃないのか?」


 ダンも続けて言う。クラウドや他のメンバーもその通りなんだよと言ってから


「なぜだか俺達にもその理由はわからない。噂じゃ王都のギルドが離さないって話だ」


 ジャンがそう言うと他のメンバーも頷いている。何か裏があるんだろう。2人はあえてその裏ってのを確かめず、


「まぁ王都に行ったらわかるだろう」


 というデイブの言葉でこの話は終わった。


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