第11話

 ダンとデイブがモレスビー郊外のダンジョンアタックを開始した頃、王国内のギルドに報告が回ってきた。モレスビーのギルドマスターが作成したそのレポートをみた国内の他の街のギルドマスターは皆驚愕する。


 その報告には2人組のノワール・ルージュが他の大陸からやってきたこと。ジョブが赤魔道士と暗黒剣士というどちらも魔法と剣が使えるジョブであること。(ジョブの特性についてもレポートに詳しく説明があった)そしてこの2人が桁違いに強いこと。


 コーエンのレポートでは彼らの強さについてこう書いてあった。


 このノワール・ルージュの戦闘能力についてはモレスビー所属のAクラスパーティであるボルケーノも目の当たりにして高い評価を与えているし私自身も実際に見ている。具体的には、


・防衛クエストでラエ要塞に籠っていた際に2人で100体の獣人を倒してきたこと。その中に3体のAクラスの獣人がいたこと。(翌日100体近い獣人の死体をクエストを受注した50人ほどの冒険者が全員確認している。また魔石もAクラスのトロルのものであった)

・ボルケーノとの模擬戦では模擬戦にならない力の差があったこと。(これはAクラスパーティであるボルケーノのパーティリーダーが証言している)

・モレスビーのギルドの鍛錬場で2人の模擬戦を見たが2人とも剣の動きは見えなく、また魔法についてもAクラスの精霊士以上のダメージを与えている。これについては私自身が見ておりありのままを書いている。


 私自身も目の前で2人の剣捌き及び魔法を見ているが控えめに言ってもこの国の全てのAクラスの冒険者よりも数段上の実力があると言わざるを得ない。なお、これらの表記内容が全て事実であることをモレスビーのギルドマスターとして保証する。


 とりあえずノワール・ルージュの2人にはCクラスのカードを支給したが実質的にはAクラス以上、Sクラスの実力があると判断している。と。



 王都にあるギルド。ここは国内のギルドの頂点に立っている。そしてそこのギルドマスターは実質的に国内ギルドをまとめるトップだ。


 王都にあるギルドマスターの執務室でチャールストンは先ほど机の上に置かれたレポートに目を通していた。これで3回目だ。


 3回目を読み終えるとチャールストンは手紙を書き、それを書き終えると職員を呼び、


「悪いがこの手紙をモレスビーのギルドマスターのコーエン宛に送ってくれるかな」


「わかりました」


 職員が封書を持って部屋から出ていくと椅子の背もたれに身体を預けて


「Sクラスだと?そんな奴は今まで見たことも聞いたこともないぜ」


 誰もいない部屋で声を出したチャールストン。そしてその後続けて


「とは言っても先入観はいかんな。この世界、桁違いに強い奴が現れないって事はないんだからな」



 ダンとデイブは未クリアダンジョンに挑戦していた。この日は9層をクリアして10層に降りてきていた。


「9層でランクAが単体、10層で複数体か。どっちにしてもサクッと行くか」


 ダンジョンはモスト大陸でもここシグナギ大陸でも同じだった。地下道の様な通路を歩いていると向こうから2体の気配が近づいてきた。両手を突き出して魔法を撃つ2人。爆発音がしてその場で絶命して消えていく獣人を無視して進んでいき11層に降りる階段を見つけた。


 11層もランクAが複数体いるフロアだった。ただ数が増えて3、4体が一塊になっている。通路を塞ぐ様に4体立っているがダンとデイブは見つけると精霊魔法を撃って数を減らしデイブは2回目の魔法で、ダンは飛び込んでいって剣で倒しては奥に進んでいった。


 12層に降りるとランクSが単体で出現するフロアになった。


「次回はここからだな」


「ようやくマシな敵になってきたか」


 そんな話をしながら地上に戻る。ここでもダンジョンの攻略情報は日々掲示板に更新されており未クリアだったダンジョンの11層がクリアされたと更新されると


「ノワール・ルージュだな」


「来てすぐに記録更新か」


「あいつら半端ないからな。11層も軽くクリアしてるだろう」


 酒場ではそんな話題になっていた。


 ボルケーノのパーティが外から帰ってきてギルドに顔を出してしばらくしてからダンとデイブがギルドに帰ってきた。ギルドカードを出して精算を終えた2人はそのまま併設の酒場に移動する。


「早速ダンジョンの最深層を更新してるわね」


 マリアンヌが言った。


「ボルケーノは10層をクリアしてるんだろう?なら11層も行けるぜ。2体だったのが3体か4体になってるだけだ。Aクラスの獣人だし通路は広くない。ジャンがどっしり構えてヘイトを取ったらあとは横から殴り放題だと思うけどな」


「なるほど。10層で2体をさっくりと倒せる様になったら11層はいけそうだな」


 マリアンヌはこの2人の鍛錬方法を聞いてからパーティ内で自分達もやってみようと話をしていた。今日はギルドからの依頼でモレスビー郊外を巡回するクエストで外に出ていたが近々あのダンジョンに挑戦しようとしていた。


「それで12層は覗いたのか?」


 ビールを飲んでいるジャンが聞いてきた。


「階段降りたところから見たがAクラス以上Sクラス未満の強さのが単体でいたな。おそらくこのダンジョンは15層だろう。12層で単体、13層、14層とそのクラスが複数体固まってる数が増えて15層がボス部屋。こんな感じじゃないかな」


 デイブが答えるとおそらくそうだろうとボルケーノのメンバーも頷く。


「となるとボスはSクラス程度の強さってことになるわね」


「まぁ大丈夫だろう」


 あっさり言うデイブ。ダンもそう思ってるのか?と聞かれたダンは


「ああ。デイブの言う通り問題ないと思うよ。Sかせいぜいその少し上のクラスだろう。普段そのクラスは4、5体を同時に相手にして鍛錬してたからな」


 誇張も何もない普段の口調で話をするダン。淡々と話をする分迫力がある。


「となると近いうちにあのダンジョンがクリアされるって事だ」


 誰かがそう言った。

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