第2話
「ダン、大丈夫か?」
「ああ。さっきまでちょっと浮遊感が残っていたがもう大丈夫だ」
「それにしても火口に飛び込んだからてっきりこっちも火口近くに放り出されるのかと思ったら予想外の森の中だったな」
デイブが自分の身体を両手でパンパンと叩きながら周囲を見ている。。ダンも同じ様に立ち上がるとローブの上から身体を叩いて土を払う。二人は森の中の地面に倒れた状態で転送された様だ。
二人で周囲を警戒するも近くには魔獣の気配はない。二人はまず装備の確認とアイテムボックス、魔法袋の中身をチェックして飛び込んだ時と全く同じだったことを確認してホッとする。次にダンが魔法袋の中からオーブを取り出してデイブに渡した。
「まぁ無理だとは思うけどな、一応やってみるよ」
そう言って魔力の多いデイブがオーブに魔力を注ぎ込む。そうして暫く待ってみるがオーブが光ることはなかった。
「やっぱりかなり遠いからかな」
反応が無いオーブを見ながらデイブが言った。
「そもそも俺達がいた大陸とここは時間帯は同じなのか?」
デイブと同じ様に反応がないオーブを見ているダンが呟いた。
そのダンの言葉にそうだ!と声を上げるデイブ。
「確かにダンの言う通りだ。違う大陸に来てるから時間がずれている可能性はあるよな。ひょっとしたらあっちは夜明け前とか仕事が忙しい真っ昼間かもしれないな。夜になったら星の位置を見てみようぜ」
そうして二人で水分を補給し、森の中を歩きだした。依然として周囲に敵の気配はない。森の中を小一時間程歩くと森の出口が見えてきた。
「こっちの世界は凄いな」
デイブが森の出口を見ながら言う。
「全くだ。一面草原だ。荒野じゃない。緑がいっぱいある」
ダンもびっくりしながら言って森から出た二人の目の前には広い草原が一面に広がっていた。緑の絨毯の様に草が生えていて所々に青青とした葉をつけた木々が生えている。
「モスト大陸とは大違いだ。レイクフォレストの市内の様だ」
そうして草原を歩き始めた二人だが、そう歩かない内に二人が同時に抜刀する。
「雑魚の集まりがこっちに近づいて来てるな」
とデイブ。
「数は多そうだがBランクとAランクしかいなさそうだ」
そしてそのまま歩いていると100体程のオークの群れが視界に入ってきた。彼らもこちらを認識した様だ。
「雑魚のくせに防具と武器を持ってるとはな」
「持ってても所詮低ランク。蹴散らそうぜ」
草原で左右に広がるダンとデイブ。近づいてくる魔獣から叫び声が聞こえてきた。
デイブが左手を突き出すとダンも同じ様に左手を突き出す。
「弱いくせによく吠える。うるさいな」
ダンがそう言った瞬間に二人の手から精霊魔法が飛び出て近づいてくる魔獣の頭に命中する。連続で魔法を打って魔獣を倒してから二人は集団の中に突っ込んで言った。
ダンは目にも止まらない速さで両手に持っている片手剣を振り回して次々と魔獣の首や腹を跳ね飛ばしていく、デイブもダン程ではないものの同じ様に魔獣を倒していった。
あっという間に草原に魔獣の死体が転がっていく。
「やるな人間。俺達が相手だ」
「俺たちの仲間を殺した借りを返してやる」
8割程雑魚を倒したところで今までのオークよりも一回り大きいトロルが3体、魔獣の集団の背後から近づいてきた。左手に盾を持って右手に片手剣を持っている。
「なんだこいつ、言葉をしゃべるのかよ」
デイブがびっくりして言った。
「さっきの奴らよりはランクが高いからか?」
ダンもデイブ同様に言葉を話す魔獣にびっくりしている。
「そうは言ってもな、Aランクの雑魚にやるじゃないかと言われてもな」
「全くその通り」
デイブの言葉にダンが答えたかと思うと二人で片手剣を振り一瞬で3体のトロルの首を跳ね飛ばす。そしてそのまま残っていたオークもその場で全滅させた。逃げようとしたオークには魔法で止めを刺し、30分もかからずに100体程の魔獣を全滅させる。
「それにしても言葉を話すとはびっくりだな」
トロルから魔石を取り出しながらダンが言った。
「それよりも俺は気になったんだが、こっちの大陸に住んでいる人間は強いのが少ないのかもしれないな。でないとランクAクラスがあんな口を叩かないだろう?」
もう1体のトロルから魔石を取り出したデイブが言う。ダンはデイブの言葉を聞いてそう言う考え方もあるなとは思ったが、
「頭が悪い奴だったかもしれないぜ?俺達にギルドで絡んできた頭の悪い冒険者の様にさ」
「なるほど、ダンの言うことにも一理あるな。所詮魔獣だしな。こっちに住んでる人間に会った時に聞けばわかるだろう」
二人はランクBの雑魚の魔石は取る意味もないと思っていたのでランクAの3体の魔石だけ取り出すと周囲を見る。死んでいる魔獣の死体の周りにはいつの間にかどこからかスライムがやってきており野生の狼の様な姿をした生き物も集まってきた。どうやら死体は放置していても問題なさそうだ。
「それで、どっちに行く?」
周囲を見ながらダンが聞くと、
「こいつら俺達が出てきた森の中に向かって進んで来てただろう?森を抜けた先に人間が住んでいる街があるんじゃないか?そこに攻撃をかけるつもりだったとか?」
「流石にデイブだな。なるほど、こいつらは人間を襲いに行く途中だったのか」
「わからないけどな。となるとこの大陸の人間に会うにはもう一度森に引き返して反対側に抜けてみた方がよさそうだ」
二人は一旦出た森の中に再び入っていった。
歩いて4時間程で森を出るとそこには先ほどと同じ様な草原が広がっていた。
「この大陸はどこもかしこも緑が多い」
目の前に広がっている草原を見てダンが言った。
「とりあえず真っ直ぐ歩いてみよう」
デイブの言葉にそうしようと二人並んで草原を歩き出した。
2時間程草原を歩くと二人の目の前に要塞の様な建物が見えてきた。遠目に見てもそれがしっかりとした作りだということがわかる。
「塀の上に人がいるぞ」
デイブとダンの目に塀の上に固まっている数名の男女の姿が見えてきた。剣や弓を持っている冒険者風の者達だ。
二人はそのまま要塞を目指して草原をゆっくりと歩いていく。塀の上の人物の顔がはっきりと見えてきて、そして頑丈そうな鉄製の扉も見えてきた。
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