第3話


 二人が草原に建っている要塞に近づくと鉄の扉が開いてそこから女性の戦士を先頭にして5人組のパーティらしき一行が外に出てきた。その背後には大勢の冒険者が扉の向こうに固まっていてこちらを見ている。


「やぁ、こんにちは」


 門から出てきた5人に近づきながらデイブが声を掛ける。ダンもデイブと並んで5人に近づいていった。


「あなた達は背後の森から出てきたの?」


 お互いに数メートルの距離まで近づいたところで5人の中の中央にいるマリアンヌが聞く。ダンとデイブはその女性の言葉に頷くと


「そう。俺は赤魔道士のデイブ、それでこっちが暗黒剣士のダン。2人組だ」


 デイブがそう言うと女性の背後に立っていたナイトの男が


「赤魔道士?暗黒剣士?なんだそりゃ?」


 その言葉にびっくりして顔を見合わせるダンとデイブ。


「あれ?こっちには赤魔道士、暗黒剣士というジョブはないのかな?」


 ナイト風の男の言葉を聞いたデイブが言うと5人がお互いに顔を見合わせる。雰囲気を察したデイブが、


「ちょっと色々あってね、できればこの要塞の中に入れて貰いたい。詳しい説明は中でするよ」


 ダンは隣で黙って立ちながら目の前の5人組と背後の冒険者達を見ていた。目の前の5人組はランクAクラスだろう。ただ背後にいるのはランクB、Cクラスだな。このランクAの5人も目の前に立っている白の戦闘服の女性以外はそれほど強くはなさそうだ。ヴェルスにはこれくらいのレベルのランクAの冒険者は普通にいる。


「その前に聞きたいんだけど」


「何だい?」


 マリアンヌの言葉に答えるデイブ。


「今二人が出てきた森の向こう側で獣人が80体以上固まっていて森を超えてこの要塞を目指して来なかった?」


「獣人って言葉を話す魔獣のことかな?オークとかトロルとか」


 今まで黙っていたダンが言うとその通りだと言うマリアンヌ。周囲の冒険者達はそのやりとりを黙って聞いてる。ダンとデイブは顔を見合わせてからデイブが言った。


「最初俺達は森の反対側、向こう側に出ちゃったんだよ、そしたら弱そうな100体程の魔獣、いやこっちの言葉だと獣人か。そいつらが俺達を見つけて襲い掛かってきたんでとりあえずダンと2人でその場で全部殺してきた」


 デイブの言葉にびっくりする5人、背後にいる冒険者達からも嘘だろう?100体を二人で殲滅したってか?弱そうだな?と言っている声が聞こえてきた。


 マリアンヌも赤いローブを着ている男の言葉を聞いて信じられないという表情になって、


「今貴方は100体の獣人をあなた達2人だけで倒してきたと言ったんだよね?」


 その言葉にそうだよと頷くデイブ。


「まだ森の向こうの草原に奴らの死体が転がってるはずだ。スライムや狼が集まって来てたけど数が多いからまだ残ってるんじゃないか?嘘だと思うのなら誰かを見に行かせればいい」


 そう言ってからポケットから3つの魔石を取り出し、


「ほとんどがBランクの雑魚だったが3体だけ鎧を身につけて盾と剣を持っている言葉を話すトロルがいた。これがその3体のトロルの魔石だ。Aランク程度だと思うが弱かったぞ」


 Aクラスが弱い?何を言ってる?とマリアンヌが思っているとデイブが魔石を3つ放り投げてきたそれを受け止めるマリアンヌ。見ると大きめの魔石が3つ。確かにAクラスだと思いながらも背後にいる精霊士のクラウドに見せる。


「この大きさはAクラスの魔石だ」


 クラウドが答えるのを聞いて前を向いて二人を見たマリアンヌ。魔石をデイブに戻すと言った。


「つまり100体の獣人達はこの砦には進軍してこないということになる。そういうことね」


「俺達が倒したのが全てならそうだ。全部殺した。もし他の場所にもいるのならわからない」


 マリアンヌはまだ混乱しているがとりあえず目の前にいる二人は敵ではなさそうだ。


「わかった。とりあえず要塞の中に入って詳しく説明をしてくれるかしら」


 そう言って5人に続いてダンとデイブの2人が要塞に入ると鉄の扉がしっかりと閉じられた。

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