ここにあらず
理柚
ここにあらず
おまえがふらふらと
千鳥足で出掛けていったのはいつだったか
ちょっとそこまで、とそわそわして
出掛けていったのはいつのことだったか
そういえば おまえがいない
確かにこの身の内で
どくんどくんと波打っていていたはずの
おまえがいない
それからというものは
まるで花のない花瓶の淀んだ水のように
時々わずかに震えるばかりで
ふいに溢れ出すこともできない有様だ
おまえがいなくなってから
いくつかの夏が過ぎた
纏った最後の一枚を脱ぐときの
恥じらいも誇らしさも
もう失ってしまったというのに
おまえのいないこの無様な体を
捨て去ることができないばかりか
ますます太々しくここに居座り
両の足がべったりと地面に張り付き離れないのだ
せめておまえがどこかで
軽やかに遊んでいればいいかとも思う
しかし
こう暑い日が続くと諦めがつかなくなってくる
隙間だらけのこの体にもう一度
おまえを取り戻したくなってきてしまう
行方知れずのおまえ!
少し日に灼けた顔で呆れながら帰ってきて
この身に火を
もう一度だけでいい おまえごと私を燃やしてくれ!
ここにあらず 理柚 @yukinoshita
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