Day 29 揃える
中学生の頃に家が火事になりました。建物は全焼したうえ、両親と祖父母、それから兄弟を亡くしまして、それからひとりで生きてきたものですから、私にとって家族というものは憧れなのです。
幸いそれからは周囲の方々に恵まれ、また事業も成功いたしまして、まとまった金銭を使える身分になりました。それでまず、焼失した実家とそっくりな家を建てました。近所の方がたまたま写真を撮っていらしたので、それが大いに参考になりました。
さて家が建ちまして、外側ができたものですからいよいよ家族を揃えようと思いました。まず大きな街の河川敷に行きまして、そこで身よりのなさそうな、父によく似たおじさんを一人連れてきました。身なりを整えたらかなり記憶の中の父に似たものになりましたので大変満足でしたが、折に触れて外出しようとするので参りました。やはり父親で一家の中心ですから、家の中にいてもらいたいものですね。ちょうど住み込みの家政婦をやってくれる、母に似た女性を見つけたところでしたので、まぁ私が仕事でいない間もこの方に任せればよかろうと思いまして、父の両足首を切りました。あなたの方にもこのようにしたくはありませんと言って、切った足首をお見せしたら、母の方は納得してくれたらしく、大人しく家にいてくれるので助かっています。
祖父母の方もあちこち探して似た方を見つけてきました。ふたりとも寝ていることが多いので外出の心配はせずに済みまして、ありがたいことです。で、あなたね。私の記憶の中の兄に大変似ておられる。立ち姿なんかそっくりですね。母の負担が増えますから、あなたの足も切りたくはありませんのでね、ええ。大変よろしい。どうぞおうちにいてくださいね。はい。これであと弟だけになりました。
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