Day 25 キラキラ

 ある夏の昼下がり、デパートに入っていた宝石店で客同士のいざこざがあった。激高した客のひとりが水晶の置物を放り投げ、ほとんど実物大の水晶のノウサギは窓ガラスを破って外に飛び出した。割れた窓ガラスが表通りにキラキラと降り注ぎ、ウサギは通りがかりの女性の頭に当たって地面に落ちた。

 その女性というのが私の友人で、この事件のために両目を失明している。むろん相当な額の慰謝料が支払われたのだが、彼女はそれを全額、最上級のオパールをふたつ買うのに費やしてしまったという。

「義眼の代わりに入れてるの」

 そう語る彼女の両目はぴったりと閉じられており、真偽はわからない。

「眼窩にオパール入れて、何かいいことあったの?」

「宝石が光るのが、音で聞こえるようになった」

 たとえるなら「キラキラ」みたいな音が、眼窩から頭蓋骨の中で響くのだという。

「本当?」

 私の疑問に、彼女は笑って嘘とも本当とも答えなかった。

 彼女の膝の上には水晶のウサギが乗っている。自分の目から光を奪ったそれを、彼女は満ち足りた顔で延々撫で続けていた。

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