Day 23 ひまわり

 昔ね、彼氏が浮気してもう別れるいうけん、最後にあんたに花の種蒔かしてよ、でなかったら絶対別れんちゅうて駄々捏ねたんです。ほら、なんか偉いひとの言葉でそういうのがあるんでしょ? 男と別れるとき絶対やろうと思って。

 超モメて、でも最後にはしょうがねぇ一個だけなってなって、でも花の種とかとっさに家にないでしょ普通。だからおつまみに買うてあったひまわりの種一個彼氏の耳に入れて、ストローで水も入れて。おつまみの種だから芽なんか出えへんじゃろと思ったけどまぁ、これでええわということで手打ちにしたんです。

 そしたら次の朝になってみたら、変に彼氏が優しいんですよね。今までそねえ事言わなかったのにうちにおはようとか、コーヒー飲む? とか聞くんですよ気味が悪い。まぁコーヒーいれてもろうたけど、飲みながら色々考えちゃった。やっぱりひまわりのこと思い出すじゃないですか。そのへんに種も落ちてないし、もしかして頭ん中に根が張って性格変わってしもたんじゃなんて。

 うふふ、ばかみたいじゃなぁ。

 でね、結局別れたの。いや、優しくはなったけど気持ち悪いけん。それに種蒔いてしまったしね……えっ、蒔くのと違うの。別れる男に花の名前をひとつ教えなさい、が正解? へぇ、川端康成の小説に出てくるんじゃねぇ。そしたらあの男、花植えられ損てこと?  

 あはは、まぁええわ今更。ちなみにその元カレ、今は結婚して子供もいて、いいパパやってるらしいですよ。ひまわりって愛妻家で子煩悩なんじゃねえ。うふふ。

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