Day 21 短夜

 夏の夜、姉さんはランプを持って溜め池の周りをぐるぐる廻る。何年か前、まだ三つの男の子をこの溜め池で亡くしているのが、まだ忘れられないのだ。

 ことに盆が近づくと「池から子どもの声が聞こえる」と言ってランプを持ち出し、ほとんど一晩中休みもせずにぐるぐる廻る。いくら夏の夜は短いといっても、夜の間ずっと廻り続けるのは大変なことだ。実際に夏の間、姉さんはずっと顔色がよくない。

 このままでは姉さんが死んでしまうのではないか。疲労のためか、それとも足を滑らせて自身も溜め池に落ちてしまうか。などと心配していたら本当に死人が出た。姉さんではなくて、二軒隣に住む四つになったばかりの男の子が、同じ溜め池で足を滑らせ、溺れて亡くなったのである。

 それからというもの、夏の夜には姉さんに加えて、二軒隣のお嫁さんがランプを掲げて溜め池にやってくるようになった。ふたつのランプが池の周りをぐるぐると廻り、明かりに照らされたふたりの女性は、まるでほんものの幽霊のように見える。

 子どもの声は、他の者には聞こえない。

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