Day 3 謎

「ただいまぁ」

 うちの玄関を開けると、ぼくを追い越すように■■が後ろからやってきて、「ただいまぁ」とかぶせる。相変わらずうちでも外でも裸足だ。

「おかえりなさぁい」

 キッチンから母さんが顔を出す。■■は母さんに、「今日の晩ごはん何?」と話しかける。

「酢豚」

「やった! なにか手伝うことある?」

「じゃあおばあちゃんにキュウリたくさんもらったから、薄く切っといてくれる? 小鉢にするから」

「うん!」

「先に手ぇ洗っといで」

 手を洗い終えた■■は、猛然とキュウリを切り始める。ぼくは床についた■■の足跡を拭き、ダイニングテーブルで宿題を始める。姉ちゃんが帰ってくる。父さんは今日は残業らしい。そのうち食事の支度ができて、■■は嬉しそうに食器をテーブルに運んでくる。

「いただきまぁす」

「■■は酢豚好きだなぁ」

「うん、お母さんの酢豚が一番好き」

「このキュウリ、■■が切ったのよ」

「へぇ。うまくなったじゃない」

 ぼくたちは順番に風呂に入る。■■は風呂に入らないけど臭くならない。皿を洗い終えると、■■は部屋にこもってお祈りをする。呪文を唱えるような声が小さく聞こえてくる。

 ぼくは姉ちゃんに話しかける。

「ねぇ、■■ってなに?」

「知らない」

「なんでうちに住んでるんだっけ?」

「忘れちゃった」

 姉ちゃんはぶっきらぼうに答える。

 父さんがようやく帰ってくる。部屋から出てきた■■が出迎える。

「遅かったねぇ」

「仕事だからなぁ」

「お母さんの酢豚おいしかった!」

「そうかぁ。■■は酢豚好きだな」

 姉さんがぼくを見ながら「いいじゃない、■■が何だって」と呟く。

「そうかなぁ」

「そうよ」

 でもあいついつも裸足だし本当は生肉が一番好きだし、前に●ん●○○○うとして皆で一生▲▲□□たじゃんあいつやっぱ何と◆◆◆◆◆◆◆んじゃないかな。駄目だ、上手く言葉にならない。■■が来る前、ぼくたちはどうしていたんだっけ。

「◇◇でい◇◇◇よたぶん」

 姉さんがそう言ってこっちを向いた。ぼくの姉さんは前からこんな顔だったっけ。そんなことを考えると頭がくらくらした。

 向こうの部屋で、■■がまたお祈りを始めた。

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