第49話 あの頃はよかった…でも、もう、あの頃じゃないんだよな…

 阿久津久人あくつ/ひさとは悩んでいることが多い。

 神崎恵令奈かんざき/えれな先輩と関わることになって、二人の子からも言い寄られているのだ。

 大段東海おおだん/あずみ先輩の方は今のところ、そこまでではないが、特に悩みの問題になっているのは早坂汐里はやさか/しおりの方である。


 どうにかしないといけないと思い、今、自室で考え込んでいるのだ。


 夕食に妹の弥生やよいからアドバイスを受けたものの、なんていう結論を出せばいいのだろうか?


 素直に、無理だと断ったとしても、絶対に一筋縄にはいかないだろう。今までそうだったのだ。

 何かしらの対策が欲しい。

 でも、一番いいのは……。


「やっぱり、一旦、付き合って、その上で何とか納得してもらうしかないのか?」


 汐里の想いを受け入れ、デートとまではいかなくとも、幼馴染として遊ぶ程度の関係でやり取りをする。

 意外とそれが手っ取り早いのかもしれない。


「……それで、汐里と遊ぶとして、どんなところがいいんだ? 街中か? それだと普通かな。喫茶店? いや、そういうところは普段から帰り際に立ち寄ってるし、普通過ぎるうよな……」


 水曜日。夕食終わりの自室。

勉強机前の椅子に座って頭を抱え、何とかよい提案をひねり出そうとする久人。

 ふと、何かが脳裏をよぎる。


 あれ……そういえば。


 昔――、小学生ぐらいの時、汐里と共に、遊園地に行ったことがあることを思い出す。


 あの頃は彼氏彼女という関係とかでもなく、普通に幼馴染として。そして、友達として純粋に関われていた。

 懐かしさを感じつつ、過去、二人で遊園地に勝手に遊びに行ったことを振り返っていたのだ。


 自宅から遊園地までは距離が遠かった。小学生の頃は特に遠く感じたのである

 まだ、世間の何も知らなかったからこそ、遊園地という存在は幸せな場所だと思えていた頃合い。

 だから、その場所に行けるというだけで、夜も眠れないほどにワクワクしていた。


 小学生のあの日。本当は、汐里の家族と共に、その遊園地に行く予定だった。

 けど、両親の都合で行けなくなったのだ。

 その時、一番悲しんでいたのは汐里だったと思う。

 だから、久人は汐里を連れて、両親に内緒で遊園地に行き、遊んだ経験があるのだ。


 後々、両親に怒られたのだが、あれはいい思い出だったと思う。

 汐里も、その時、遊園地に行けたということで、満面の笑顔を見せていたのだ。

 あの頃は、汐里の笑顔をさえ見れれば、内心、嬉しかった。


 遊園地の件もそうなのだが、今、思えば、汐里と色々な経験をしてきたと思う。


 意外と一番、一緒の時間を過ごしてきたのは、汐里なのかもしれない。妹の弥生とも多くの時間を過ごしてきた。

 けど、それ以上に、汐里との思い出もあるのだ。


「……自分勝手だったのか……」


 久人はふと言葉を零してしまう。

 元々、汐里とは幼馴染の関係だった。

 恵令奈先輩から告白されるまでは。


 恵令奈先輩から、全校集会の時、公開告白された日の朝。

 もしかしたら、その時から。

 いや、もっと前から、汐里は告白しようと思っていたのかもしれない。


 けど、久人は自分勝手に恵令奈先輩の告白を受け入れた。

 あの時は、自分だけの事しか見えていなかったのだろう。


 でも、一体、どうすればいいんだ……。


 まだ、汐里のことは本当の意味で好きかと言われると、ハッキリとした返答はできない。

 優柔不断になっているというのもある。

 だから、すんなりと答えに辿り着けないのだろう。


「やっぱり、本当の意味で決別するためにも。汐里とは一応、遊んだ方がいいよな……遊園地にでも誘うか……」


 久人はある程度、心に整理はついたような気がした。

 後は行動するだけである。


 自分にも非はあったわけだ。汐里の気持ちも考えずに、勝手に恵令奈先輩と付き合ってしまったこと。

 久人はスマホを片手に、汐里の連絡先を画面上に表示させたのだ。そして、その画面をタップするのだった。

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爆乳な生徒会長から結婚前提の公開告白をされた瞬間、なぜか、モテ始めたんだけど、これは一体、なんていう美少女ハーレムなんだ⁉ 譲羽唯月 @UitukiSiranui

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