第7話 なぜか、エプロン姿の実妹が誘惑してきたのだが⁉
あの二人の強大な壁。
そもそも、
そのためには……少々痛手になるものの、二人の部活に入部した方がいいのかもしれない。
敵を知るためには、敵のテリトリーに一度入ってみるが一番効率がいい時だってある。
今、自室に一人で、今後の方向性を考えつつ、用紙と向き合っていたのだ。
久人は必要なことを、その用紙に書き出していく。
「そうと決まれば、今週中に、あの二人とは自ら接触を図りにいかなければいけないよね」
久人の大分固まりつつあった。
仮に、入部して二人からアプローチされたとしても、
「それにしても、恵令奈先輩の爆乳は凄かったな……」
やはり、爆乳の方がいいと、今、振り返って考えても思う。
結婚するなら、爆乳であることが第一の条件である。
久人にとって、絶対に譲れない掟の一つであることは間違いないのだ。
「この恵令奈先輩と距離を縮めて……」
久人はニヤニヤしていた。
刹那、ハッと気づき、背後を振り向いて部屋全体を確認したのである。
「……だ、誰もいないか……弥生もいないよな?」
冷静になって、確認していた。
心臓の鼓動は変な意味合いでドキドキしている状態。
先ほどの件もあり、それが気がかりになっていた。
「……押し入れとか……まさかな」
久人は椅子から立ち上がり、部屋に設置された押し入れのところまで向かう。
ガラッと開けた。
「……いないな、うん」
久人は確認し終えると、扉を閉めたのである。
「だよな、まあ、弥生は今、料理作っているわけだし。まさかいるわけなんてないよな」
弥生は、一階リビング隣にあるキッチンで夕食の準備をしているのである。
だから、久人の部屋には居ない。
それは当然である。
「はあぁ……」
久人は胸の鼓動を抑えるためにベッドにダイブするように横になったのだ。
「というか、大体は今後のスケジュールは決まったな」
ベッドに横になっている久人は、そんなことを呟いていた。
「そうだ、恵令奈先輩には、相談しておかないと」
久人はベッドから上体を起こす。
汐里と東海先輩が所属している部活に情報収集の一環として潜入するのだ。
変に誤解されないように、伝えておいた方がいいと感じたのである。
ベッドから立ち上がり、勉強机の方へ歩き、机の上にあったスマホを片手に先輩のアドレスを見つけるのだ。
画面上をタップし、メールフォルダのアプリを開き、必要最低限のことだけを入力し、緊張した面持ちで送信ボタンを押したのである。
「……なんか、早いな」
先輩は常にスマホを手にしているのだろうか?
そんな疑問を抱えながら、久人はスマホの画面と向き合う。
画面上には、メッセージが受信されたと表示されていたのだ。
久人は緊張した心持で震えた指先を使い、そこをタップする。
そして、メールフォルダへと繋がるように、そのアプリが起動するのだった。
《入部? 変な気持ちがないなら別にいいわ。確かに、二人のことを対策するなら、入部するのもありかもしれないわね。でも、私以外の子には、あまり靡かないでほしいかな。それをしっかりと約束できるなら、最終的な入部申請を受理するわ》
先輩の文章を長かった。
メール上では緊張せずに、先輩のストレートな想いが記されているような気がする。
入部する時は、部活の部長から渡された入部届に記入することになるのだ。
その後で、生徒会役員が見、最終確認を行い、受理するかどうかの判定が下されるである。
今回は明確な目的が久人にあったことで、入部届を生徒会室に持っていけば受理されるとの事。
これはこれで一安心である。
でも、まだ、続きがあった。
《もし、変な気持ちを抱いたら許さないからね。そこは肝に銘じて、入部届を記入しておきなさいね。わかった? それと、明日は生徒会室に一度来るように。そこで、もう一度、お話をしましょう。わかりましたか?》
先輩の返答文は以外にも長かったのである。
対面上で会話していない時の先輩は、グイグイ来るような感じだ。
「まあ、これで、話はついたかな……」
久人は、一応、“分かりました”という感じのメール文を構成し、送信しておいたのだ。
「……」
お腹が減ってきた。
久人は軽く腹を触り、減り具合を確認したのち、自室を後にしたのである。
二階の廊下に出ると、一階からいい匂いが漂ってくるのだ。
「これは? まさか」
久人は気づいた。
急ぎ足で階段を駆け下り、一階のリビングの扉を開き、足を踏み入れるのである。
「お兄ちゃん、ひと段落つきましたか?」
「う、うん――⁉」
久人は衝撃を隠しきれなかったのだ。
実妹である、
「どうしたんですか、お兄ちゃん?」
「いや、それは?」
久人は頬を紅葉させ、少々後ずさってしまう。
「これ? エプロン付けているだけじゃん」
「いや、そ、その下は?」
「それ、私に言わせるつもり? お兄ちゃんのエッチー」
「これどうかな?」
「どうって……」
「似合ってる?」
妹の弥生は、デフォルメされた猫がデザインされたエプロンを身に纏っている。妹は、そのエプロンをヒラヒラさせ、焦らしてくるのだ。
「ま、まあ……」
「お兄ちゃん、私のエプロンの下、気になる?」
「べ、別に……というか、妹の裸に、きょ、興味とかないし……」
久人はツンデレ風に言った。
「どうせ、見たいくせにー」
「う、うるさいな……というか、料理は? いい匂いしてたんだけど」
「それは目の前にあるでしょ?」
「は? ん? どこに?」
「わ・た・し♡」
妹は意味深な感じでウィンクしてきたのだ。
「――⁉ いや、冗談はやめてくれ。エビフライのような匂いがしたんだけど」
「もう、お兄ちゃん、つまんないのー」
「つまんなくてもいいんだよ」
久人は、今日一日で色々問題に巻き込まれ、無駄に体力を消費し、腹が減っていたのである。
「お兄ちゃん」
「な、なんだよ」
ツインテール風の髪型をした弥生が、右腕に抱きついてきたのである。
しかも、エプロンだけで隠された裸体のため、まな板のようなモノだったとしても、妹のおっぱいを感じることができたのだ。
久人は気まずくなったのであった。
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