第3話 爆乳な生徒会長と付き合うことになった俺は、幼馴染と部長からも告白されたのだが…⁉

 結婚するならば、爆乳としたい。

 それが、阿久津久人あくつ/ひさとの願望であり、欲望でもある。


 けど、そうそう、そういった女の子と結婚できるわけがない。

 それどころか、付き合うことも不可能に近いのだ。


 ただ、今、その現状が大きく変わろうとしていたのである。






「阿久津久人。私と付き合ってくれますか?」


 淡々とした口調。

 大人びていて、真剣な表情。


 人生初めての告白が、真面目な感じになるとは――


「どうなんですか? 阿久津久人」


 彼女からの確認するかのような告白のされ方。


 久人の正面には、爆乳な美少女の生徒会長――神崎恵令奈かんざき/えれながソファに座っていたのだ。

 長テーブルを挟み、彼女の反対側の客人用ソファに座っているのは、久人である。


 お見合いのようなシチュエーション。

 ただ、二人以外には、その部屋には誰もいないのである。


 生徒会長と二人っきりの空間。

 ここは、生徒会室の隣の場所であり、裏会議や、生徒との悩み相談、客人との対話の時に利用される部屋らしい。


「久人?」


 恵令奈は首を傾げ、潤ませた瞳を見せてくるのである。


「……ほ、本当に、俺だったんですね?」

「そうよ……嘘じゃないわ」

「俺……現実味がなくて……その……」

「私とじゃ嫌だったから、全校集会の時に返答をしなかったわけ?」

「え、いや、その、そういうわけではなく……ばくにゅ――じゃなくて、その……驚き過ぎて返答できなかったんです」

「そうなの? では、私のことは好き?」

「好き……というか。ま、まあ、はい……」


 と、久人は、生徒会長の豊満なバストを見つつ、頷くように返答したのである。

 今、久人の脳内には、恵令奈えれなのおっぱいのことしかなかった。


 おっぱい、おっぱい、おっぱ――――

 いや、じゃなくて、ああ、駄目だ……、そればかりが、脳内に――‼


 久人は無言で、慌てた感じに頭を抱え込んでしまったのだ。


「どうしたの? 阿久津久人?」

「はッ、いや、な、なんでもないです……」


 久人は冷静さを取り戻しつつ、大人しくなった。


 でも、やはり、生徒会長の爆乳は捨てがたい。

 そう簡単に、彼女の告白を切り捨てられる状況じゃないのだ。


 久人の求めていた爆乳が今、瞳に映っている。

 でも、告白を了承してしまうと、妹の弥生とかに嘘をつく方になり。その上、学校の連中からのアンチが増えることになるだろう。


 おっぱいを取るか、自分の学校生活を守るか。


 久人の人生は大きな岐路に立たされているような感じであった。






「ですが……その、なんで俺と付き合おうと思ったんですかね?」

「それは……だな」


 と、生徒会長は咳払いをする。


 そして、久人ひさとの方を恥ずかしそうに、見つめてくるのだ。


 どうしたんだろ……。

 そう思っていると。


「私は、高校を卒業したら、結婚することが決まってるんだよね」

「なんで、そんなことを俺なんかに報告⁉」

「報告というか、その……。別に好きな人ができて、それなりの関係になれば、その婚約を破棄できるというか。まあ、そういうことだ」

「……婚約を破棄させるために、俺が選ばれたと」

「ま、まあ、そうなるね、んんッ」


 生徒会長は咳払いをして、現状を整理するように、一旦、一呼吸つくのだった。


「では俺は、そのために選ばれたってことですか?」

「そうだね」

「では、先輩は俺のことをそこまで好きではないと」

「そ、そうではない」

「では、好きってことですか?」


 久人は不安な面持ちで、伺うように問いかけるのである。


「そこはまあ、好きではあるな。まあ、なんというか、そういうつもりでさっきから話を進めていたんだけど?」

「で、ですよね……ん⁉」


 久人は体をビクつかせた。


「どうした、阿久津久人?」

「い、いいえ……というか、先輩は本当に俺のことが好きってことですか?」

「だ、だから、そういってるだろ……私に何度言わせるつもりだ」

「……」


 久人は現実離れした展開に、心臓の鼓動が高まり、どうにかなってしまいそうだった。

 あの爆乳でかつ、美少女な先輩から、本気で好かれるとは思ってもみなかったからだ。


 これはまさに転機である。


 爆乳な先輩と結婚前提の付き合いができるというもの。

 嘘ではなかった。


 いまだに現実のように信じられず、久人は自身の頬を引っ張ってしまったのだ。


「どうしたの?」

「い、いいえ。俺が先輩から嘘偽りなく告白されると思ってもみなくて」


 久人は俯きながら、ニヤついていたのである。

 むしろ、ニヤニヤが止まらなかったのだ。

 この感情はどうしたらいいものか。


 久人は本当に、爆乳な女の子からの告白を受け、テンションが爆上がりだった。


 けど、その幸せな感情を表に出さないようにしたのだ。

 下心ありげな態度を見せてしまうと、このチャンスが潰れてしまいそうな気がして、それを恐れていたからである。


「では、私と正式に付き合ってくれますか?」

「は、はい。つむしろ、つ、付き合わせてくださいッ」


 久人は頭を下げたのである。

 真摯な気持ちで、爆乳な先輩と向き合ったのだ。


 内心、爆優な先輩と正式に付き合えることばかりで、脳内が構成されているような事態に陥っていたのは事実。

 けど、今はエッチな感情を全力で抑えていた。


「で、では、よ、よろしくね、阿久津久人」


 と、先輩は手を差し出してきたのだ。


 久人は顔を上げ、先輩の優しくも温かい手を握ったのである。

 これでようやく、正式に付き合うことになるだろう。


「で、ですが、学校内で付き合うとなると、色々と危ないので。デートをするなら、誰も知らないところでしませんか?」

「そ、そうだな。じゃあ、後でどこで付き合うか考えておくから。まあ、放課後ね。そのもう一度ここに来てくれ。その時にもう一度話そう。私は少しやることがあってね」

「そうなんですか?」

「ええ」

「俺、手伝いますよ?」

「それは無理。大事なことだから」


 先輩からキッパリと断られたのである。


「そうですか……さすがに難しいですよね。生徒会役員の仕事は……」

「でも、必要な時は頼むかもしれないから……」


 生徒会長は頬を紅葉させ、恥じらいを見せつつ、軽く笑みを見せてくれたのだ。


 先輩の笑顔を愛らしかった。

 今まで見た女の子の誰よりも。


 久人は誓った。

 この先輩の笑顔を守り抜くと。そのためには、先輩と真摯に向き合い、先輩の両親に、この関係を認めてもらう事。

 今はそれが重要である。






 生徒会長との対話を終了させた久人は、生徒会室の隣の部屋を開け、校舎の廊下に出る。


 これで色々な意味で一安心。

 先輩は、全校集会の時の告白は何とか誤魔化すつもりでいるようだ。


 二人の関係性は隠し、学校関係者のいないところで、二人っきりで付き合う方向性になったのである。

 すべてがうまく事が進んでいると思った。


 久人は部屋の扉を閉め、扉を背にするように振り返る。

 すると、強い恨みのようなオーラが、多方面から迫っていることに気づいたのであった。


「お兄ちゃん? あの発言は嘘だったの?」

「この変態、バカ、死ね、久人」

「ひさとはもう一度、私が指導した方がよさそうだね。だから、私の部活に戻ってきなよ」


 そこには――


 妹の弥生やよい

 幼馴染の汐里しおり

 元部活の先輩の東海あずみ


 が、各々の表情を浮かべ、対抗するように佇んでいたのである。


「ど、どうしてここに⁉ まさか⁉」

「そうよ、聞いていたんだからね、お兄ちゃんッ」


 妹からの敵意の視線。


「久人? バツとして私と付き合いなさい!」

「ひさと、私の指導がよくなったみたいだね。この入部届にサインしな。そして、私と付き合ってもらうからな」


 二人の美少女からも、予想外の告白をされたのである。


 これは、天国なのか。地獄なのか――

 久人は、考えるに至る前に、ヤバいことになったと直感的に感じたのだった。

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