第16話 影と錆びた門
【文披31題】DAY16 テーマ「錆び」
錆びついた、赤い門のような。
鳥居のような何かが遠くに見えた気がした。
そんなものこの町にあっただろうか。
気がつくと足元は水浸しになっていた。
この辺りは浅瀬だが、門に近づくに連れて深くなっているように見える。
鼻につく香りは川ではなく、海。
無数の黒い触手のような何かが、門の近くでうねうねと動いているような気がした。
よく見ようとすると、目の前を影に覆われる。
いつもみたいにふざけているのではなく、鬼の家の庭で聞いたような、透き通る声がした。
「駄目」
「なにが?」
「見ちゃ駄目」
「でも」
「……忘れたほうが良い」
「いや、でも」
「これ以上は、駄目」
視界が開けたと思うと、俺よりも倍以上大きくなった
んべ、と大きな舌を出し俺を一舐めした。
それはひんやりとしていて、想像とは違い表面がサラサラしていた。
「……何が?」
「どうした?」
気がつくと
日陰が無く、遠くに蜃気楼が視える一本道で俺は立ち尽くしていた。
何かあった気がするけれど、思い出せない。
「今、何か感じた……考えていたことがあった気がするんだけど」
「暑さにやられてるんじゃないか。かえろ」
「あ、ああ……そう、しようかな」
「ウン。コンビニでアイス買ってかえろ」
「えぇ……真っ直ぐ帰るんじゃないのか?」
「
「気を遣ってくれてるのか?」
「ウウン、オレが食べたいだけ」
「ああそう……」
このまま道を進めばコンビニがある。
オレではなく後ろ、どこか遠くを赤い目が見ていた。何を見ているのか。
振り返ろうと思ったが、何故か首を動かす気になれずに歩きながら問いかけた。
「何か気になるものでもあるのか」
「ん? 別に」
「そうか?」
「ウン。早く行こう、ここはよくない」
「確かに、暑いからな」
その時、ザアァンと波の音が聞こえた気がした。
川と池の音なら、この町で聞こえても特段違和感を感じない。
だが、流石に海はまずい。
関連性も無ければ、理由も皆目検討がつかない。
いよいよ暑さでおかしくなっているのかもしれない。
「……俺、まじでヤバいかも」
「動けるうちにコンビニにいそげ。駄目なら担いでやる」
「まだ動けるけど倒れたらよろしく」
「ウン、任せろ」
何故だか普段より強く、
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