第4話 影に滴る赤
【文披31題】DAY4 テーマ「滴る」
「うわぁ!!」
トイレから部屋に戻ってきて扉を開けた瞬間。
俺は思わず叫んでしまった。
影の姿をした
うちの中で何か食ったのかと思ってビビリ散らかしてしまったのだが、よく見ると様子がおかしい。ぷるぷると震えおどおどしていた。
「ちが、ちがう。な、なにも、なにもしてな、いや、した。えっと、ごめ、ごめんね、ちがうの、その、えっとえっと」
近づいてみると、独特の香りがする。
この香りには覚えがある。
別に俺が物騒な事に慣れているとかそういうんじゃない。そう、日常でも嗅いだ事のある匂い。
「……トマトジュース?」
「あ、あのね。ゆ、
机の上には、一度落として拾ったらしいトマトジュースの缶が、縁に赤い水滴をつけたまま置かれていた。
「上手く開けられなかったんですね。大丈夫ですよ」
「ご、ごめんね優史」
「謝ってくれてありがとうございます。それより、べたべたして気持ち悪くないですか?」
「え、えと、きもち、わるい……」
「タオルで軽く拭いてからお風呂行きましょうか」
「え、えと……ど、どうしたらいい?」
「じっとしててください。タオル取ってきますから」
「う、ウン」
ぐるぅんくるんくるくるりくるりんととても小さくなった。これ以上広げないようにしてくれたのかもしれない。
急いでタオルを2枚取ってきて、一枚は床用に、もう一枚は
「こ、これ、なめたらだめ?」
「うーん……お腹とか壊さないならいいですよ」
「じゃ、じゃあいただきます」
そういうと小さな体から大きな赤い舌を出してべろりんと一気に溢れている床を舐めて綺麗にした。どうなってるかはわからないけど手間は減った気がする。いや、後でもう一回念の為に拭くけど。
満足気にしたあと、今度は器用に舌を動かして、
目の前にしゃがんでみると、嬉しそうに報告をされた。
「……おいしかった」
ついでにちょっと床が綺麗になっている、ように見えてどことなく申し訳なくなる。
そこまでちゃんと俺は掃除してない。
「今度、またちゃんと飲みましょうね」
「いいの?」
「まだしばらくうちに居るんでしょう?」
「居る」
「なら、飲む機会はありますから」
「ウン」
「今度飲むときは教えて下さいね、俺が開けますから」
さっきまで赤くなっていた床にタオルを一枚置いて、もう一枚で
「うわ、わ、わ……!」
「嫌でしたか?」
「う、ううん、嫌じゃない! 嫌じゃない、けど!」
「けど?」
「な、なんでも、ない……オレを、どうするの? やっぱり捨てちゃう?」
不安げに俺の方を見上げながらふるふると震えている。前なら一瞥して捨てていたところなのに、いつから俺はこんなに丸くなったのか。
「……お風呂に行くだけですよ」
「おふろ! 久しぶりだ!」
「ん? 久しぶり?」
「あ、う、なんでもない……」
目も隠してしまうように、くるんとさらに丸まった真っ黒な物体は何も言わなくなった。
抵抗がないのを肯定と受け取り風呂に運ぶ。
かけたお湯にびっくりされて、
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