第3話 影の食べるもの
【文披31題】DAY3 テーマ「謎」
「何食べるんですか?」
「かすみダネェ」
「まさかの仙人……?」
「ウソだヨ?」
怒った? と楽しげに聞き出しそうな態度に苛立ちを歯を食いしばって我慢する。
出会った日から何も食べてない気がして。
考えても皆目検討がつかないか、出来たら想像したくない食料しか浮かばなかった。
だから聞いてみただけ、ではあるがこれは腹が立つ。
興味も持たなければよかった。
と若干後悔しながら、もう一度問いかける。
「……何、食べるんですか」
「聞いてどうするの?」
「今の所約束守ってくれてるし、夏祭りまで持たなかったら嫌じゃないですか」
「……オレ、の心配?」
「そうです」
ほんの少しフリーズしていたようだった。
すぐに左右にゆったりと、照れているかのようにいつもより少しだけ早く影は揺れた。
「なんでも、たべれるよ」
「なんでも……無機物もですか?」
「それは何?」
「机、とか?」
「それはたべれるけどおいしくない」
「美味しくないんだ……」
「おいしくない」
揺れが止まって少しだけ俯くように丸くなり、赤い舌を出して嫌そうにしている、気がする。
とりあえず話題を逸らした。
「普通のご飯はどうですか」
「お前が食うやつ?」
「はい」
「おいしいから好き」
「おぉ」
楽しげにゆったり左右に揺れていたが、急に動きが止まる。
「でも……」
「でも?」
「オレ、に食べさせる人なんか、いない」
ぐるぅんくるんくるくるりといつもよりかなり小さく丸まってしまった。
「今日の昼から一緒に食べましょうか」
「……いいの?」
にゅるるん、と一気に伸びて期待に満ちて居るのか赤い3つの瞳も今までより大きく輝いていた。
距離が近い。
「お腹は空くんでしょう?」
「………………ウン」
今の間は何だ。
お腹は空かないのか、それとも物足りなくなるのは腹じゃないのか。
色々考えて突っ込みたい衝動を抑えて微笑む。
「じゃあ昼からで。食べたいものがあったら教えて下さいね」
「食べたいもの……うーん……」
「見つかったらでも良いですから」
「ウン」
そういうと嬉しそうに、大きく左右に跳ねるように影は揺れた。
食べるものはわかったけれど、別の謎は残った気がした。
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