第8話

「なあに。なっちゃん、好きな人でもいるん?」

「いないよ。恋したーい!」

「私、好きな人いるから」

「え?は?あ?あん?」

「いや、ガラ悪くね」

嘘だよ、ちょっと言ってみただけ、と弁明しようとしたが、出来心が疼き、夏海の反応を見ることにした。

「嘘!なんで、誰?あ、あの噂ほんまなん?」

「え、噂流れてんの、なにそれ」

「澪が小山くんって人好きかもって、なんか澪と同じクラスの子が言ってたんだよね」

"小山くん"とは、私の隣の席の男子である。

身長は高く、顔は整っていると思う。

ただ、私には、それしかわからない。

情報源が情報源なだけに、大体事情を察知した。

「あー、それね、先週ちょっと、ね」

「なんかあった?」


「澪、お願いがあって」

同じグループにいる子から声をかけられた。

「うん、何?」

「小山に好きな人いるか聞いといてくれない?」

「え」

そういう話は苦手だ。というか、恋愛話を男子に仕掛けるということをしたことがないし、なんというか、躊躇う。

少なくとも私にそんな度胸はない。

「お願い。聞いてあげて。この子、小山のこと好きなんやって」

同じグループの別の子からも言われた。

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