第6話

「まぁ、視線痛いですけど、ありがたいですよ」

「お、意外」

「注目されるの面倒です。とか言うと思ったでしょう」

「うん」

「どうせ、今だけなんで。注目されるの。ありがたいです」

自覚はしているが、私には、物事を俯瞰し、現状を投げやりに観察する癖がある。たぶん、中学生としては、よくない。

「澪」

「うわ、なんですか。急に」

「国語好きやろ、自分」

「あれ、そんなこと話しましたっけ」

「諸行無常の響きあり、とかやったやろ」

「それ、だれでも知ってるでしょう」

「澪、水泳嫌いなん」

さらっと嫌なこと聞くな。薄々気づいてはいたが、こういう人を食えないやつって言うんだろう。

「さっきから、なんで澪なんですか」

彼の視線が私の左側の横顔にあるのがわかる。痛い。今日浴びてきた、たくさんの視線よりも、この人の視線が一番痛い。怖い。

「給食、遅れるで」

私の何を察知して、この人は会話を切り上げるのだろうか。

その日から、遥と二人で話す時に限り、彼は私を澪と呼ぶようになった。

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