第4話

「澪です。林田澪です」

「林田ちゃんね。覚えた。自分、入学式から話題やで」

色が抜けすぎて、毛先が金髪にも見えるほどの茶髪は、制服によく映える。否、よく目立つ。

「髪ですか」

「髪やね。うち、水泳部ないし、ちょーっと悪いやつらが多い地域やし」

「地毛です」

「自分、めげんね、おもろい。それは今よくわかったって」

めげないも何も、地毛だし、早く帰りたい。


「俺、サッカーやってる。2年の山本遥。またな、練習頑張れよ」

私の何を察知したのかはわからないが、彼らがさらっと帰路につこうとしたのには、少し慌てた。

「あ、ありがとうございます。お疲れ様です」

まるで部活の後輩のような挨拶をした。

おう、と言って去った彼らの後ろ姿を思わず眺めていた。

なるほど、先輩と後輩の恋愛模様が世の中に多いわけがよくわかる。

同じ服を着てるのに、自分より色々と慣れた姿を見ると、自分も早くこうなりたいという憧れが生まれる。

人間の哀れな脳は、それを恋だと認識するわけだ。


翌日から、学校帰りに会ったら、先輩方は声をかけてくれるようになった。

対して私も、気づけば、学校内で会っても、自分から挨拶するようになっていた。

生まれて初めての部活の先輩ができたかのようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る