第3話

聞かれた内容やそこに張り詰めた空気感なんかより、制服着たてほやほやの一年生女子を、男が揃いも揃って囲い込む、その現象に出会っているのが自分だということに驚いた。


「あー、水泳やっていて」

「え、水泳?」

「今日も5時半から朝練あったんですけど」

「え、5時半?」

「塩素で色素抜けちゃって、髪傷んでて。先生も承知済みで、会議でも話してくれているそうなので、大目に見てもらってもいいですか」


自分より巨大な男の群れに臆せずに答えた姿を買ったのか、それとも単純に内容に感動してくれたのかはわからない。

「すげえな!」

「頑張ってんなぁ!」

「5時半ってやばくね。まだ夜やん」

「え、オリンピックとか目指してんの」

打って変わって空気感が変わった。ありがたい。

あと、オリンピックは目指していない。


「名前、なんての?」

他人に物を頼む時は、自らが先に名乗るべきな気がしながらも、素直に答える所はやはり小心者か。

「林田です」

「下は?」

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