太陽が昇った日


 彼女が目に入ってきて、全てが蒼い光で溢れた。


胸に溢れた全ての絶望の感情が消え失せ、いとも容易く幸せの海で満たされた。


俺は幼少期に彼女に恋をした。


それからずっと頑張って、ついに自分が信じたものすら信じられなくなって彼女の事さえ好きでいいのか分からなくなって、俺は今自分で自分を殺そうとした。


彼女を見たその瞬間に俺は、今この瞬間。


体の全てが熱になったかのような、太陽の中にでも入ってしまったのかと思うぐらい、全身に力が漲り燃えて。


もう一度彼女に身を焦がすような恋をした。



「好きです」



腰に手を回して俺を助けてくれた彼女を引っ張り上げる。


俺を助けた代わりにそのまま身を投げ出す形になった彼女を全身に溢れる力を使って引き上げた。


屋上の縁に手を引っ掛け、片手で彼女を上にあげる。


俺を離さない彼女は俺がまだ死ぬつもりであると思っているのだろうか、手は固く俺を掴んで離さずその眼は俺を抱きしめている。



「好きです」



もう一度口から自然と溢れた。


後悔はない。振られてももう俺はこの先幻聴にも幻覚にももう会う事はないだろう。


彼女の瞳が、俺の瞳と溶け合って、俺の心に炉心を灯してくれた。


蒼い炎が燃え盛る。


彼女の心が俺に燃え移って、どうしようもなく世界が輝いてみえた。


俺の太陽がはっきりと俺を照らしていた。



「貴方の事が好きです。幸せにしてみせます。俺の全部をあげます。俺の心に俺の眼にもう貴方以外映したくないんです。貴方の隣に立たせて下さい」



答えは――――。




 太陽が沈んだその場所で


2人の人間の瞳には太陽が輝いていた。


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