想い違い


立ち入り禁止の看板を体育倉庫から運び出す。


教師に屋上に持って行って欲しいと頼まれたからだ、この暑さに動きたくなかったんだろう、めんどくさい雑用だ。


夏の暑さが体の怠さを呼び熱気が肌を包む。


蝉は忙しなく求愛の唄を周囲に響き渡らせる。


つまりは交尾したい!と全力でシャウトしている訳でよく考えてみれば夏の風物詩に合わないよな?俺はそんな事冗談でも言えねぇのに虫畜生がリア充気取ってるとマジで今すぐに殺虫剤ぶっかけに行きたくなる。


だが一週間の命。無常なのは何処も同じ故許そう。

・・・童貞のまま死ぬならば。


「先輩!」


「何だ、後輩」


クソ気まずい。


~振ったはずの後輩と二人きりの体育倉庫、夏の思い出~じゃねぇんだよ。


やめてよね、俺の大好きな彼女に知られたら俺が死ぬしかなくなるだろ。


「私、はっきり伝えにきたんです」


「俺はお前と付き合う気はない」


「先輩が好きです」


「聞けよ」


「超好きです」


「聞けって」


「例え先輩が痴漢行為でしか興奮できない変態であったとしてもです」


「・・・・・・・・・」


人は、理解できない事が起こると宇宙を感じるのだと俺はこの時初めて知った。


そして頭の中で蝉の声がとうとう俺、交尾成功したわwwという声に聞こえ始める程加速されきった思考回路の中で今俺の耳の中に入って来た音を咀嚼した後俺は意を決して返答をした。


・・・何故その言葉のチョイスを?


「・・・みー・・・っすー・・・ーん・・・みーん?」


「・・・せ、先輩?大丈夫ですか?」


蝉語しかでてこんかった。


「あ、もしかして痴漢の事で動揺してます?」


しねぇわけねぇだろ、こ〇すぞ。


「みー・・・ひゅー・・・」


「まだしゃべれないんです・・・?」


幾ら何でもダメージデカすぎじゃないです?

そう言った後、後輩が事の詳細を教えてくれた。


俺の過去を漏らしてる女がどうやら同学年にいるらしく色んな人の嫌な噂なども触れ回ったりしてるらしい、と。


この事は学校でも広く出回っていると。


「最近だと読モにでてるあのクッソ美人の先輩さんの批判とかもしてるらしいっすよ?あ、後先輩の件は所詮は小学生の事って皆きにしてないっすよ・・・それに私は全然大丈夫ですしぃ・・・」


「・・・ほら、先輩手でぎゅってしてもいいんすよ?私のおっ・・・」



振り切って逃げた。


どうでもよかった。


悲鳴が聞こえた気がした。


俺のこれまでの努力は全て無駄になった。


彼女にまた迷惑をかけてしまった。


死にたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る