プロローグ4
オルクスと共に朝食を終えると、私は早速手配された講師の手によって授業を開始! などと言う事は無く、オルクスの手によって今日の『ライラ姫様生誕半年記念祝賀会』の為のドレス選びが始まった。
仕事はどうした、魔王。
今日の為に準備したと言うドレスはどれも可愛らしく、それでいて私でも高級そうだということがわかる。
そして、何故に一回しか着ないと思えるドレスを数着も用意しているのだろう。
これが金持ちなのか? 確かに前世の漫画でも貴族のお嬢様は一回袖を通したドレスはもう着ないとか言っていたような?
でもそれって典型的にざまぁされるお嬢様の台詞だよね?
私、ざまぁはちょっとされたくないというか、そもそも『フルフル』に登場していないんだから、ざまぁもなにもないよね?
……あれ、『フルフル』で
しかも、
え、もしかしなくても
攻略対象が提案してくれたから、とか言っているけど、実行するかどうかを決めるのは
おやぁ? 『フルフル』の
「ねえ、パパ」
「どうかしたか? こちらのドレスは気に入らないか?」
「ううん、とってもかわいいと思う。そうじゃなくてね、ペオニアシ国の二人の姫様の名前って何? 姉姫がリリスなのは知っているんだけど」
「確か、姉姫がリリス=アルジェン=ペオニアシ。妹姫がシオン=ウェルンド=ペオニアシだな」
「へえ、デフォルト名ないから
元日本人として馴染みやすい名前ではあるかな。
前哨戦、どうなっているんだろう? ものすごく気になる。
中等学園で出会う攻略対象は9人だけど、ステータスによっては最大17人が登場するんだよね。
ゲームでは王宮や高等学院の関係者がステータス次第で登場するけど、実際問題現実では王宮の関係者に遭遇っていうのはあるんじゃないかな。
他にも貴族の子息である高等学院関係で出現する攻略対象とだって、姫と言う立場で関係を持つかもしれない。
流石に本格的に継承権争いが始まる高等学院が始まってからじゃないと登場しない、他国の攻略対象とかは無理だとは思うけどね。
それにしても、乙女ゲーム的に攻略対象を集めるためとはいえ、王位継承争いをしている国に自国の王子を留学させるとか重要人物を派遣するとか、国としてどうなんだろう。
この魔国も魔王自らが公爵と名乗って乗り込むけど、本当に
うん、オルクスの攻略難易度は高かったというか、魔族全体の攻略難易度が高かった。
戦略的要素を考えると能力の高い魔族は味方に引き入れておいて損はないけど、オルクスが敵陣営に取られるとごっそり寝返るから頼り切るのも危険だったんだよね。
「うむ、今日のドレスはこれだな」
さんざん悩んでやっと決まったのか、オルクスは私の前にドレスを出して……。
「ドレスじゃないやんけ」
どこのアラビア系踊り子衣装だ? 見た目が3~5歳の子供が来ても色気のいの字もないぞ?
いや、この見た目だから着たらさぞかし可愛らしいとは思うけどね。
「今日はレヴァール国の来賓が来ることになっている。あの国風の衣装を身に着けて歓迎するのも悪くない」
「……初耳なんだけど」
「私に娘が出来たと知って見に来るそうだ。あの男も暇をしているからな」
レヴァール国、それは『フルフル』にも登場する国で砂漠とオアシスの国。
大きなオアシスがいくつもある為水不足というわけでもなく、衣装や武器がアラビア風という特色を出すためだけにそのような設定にしたのだろうというのが、ユーザーの間では有名な話だったりする。
「パパが貴賓なんていうとなると、かなり地位の高い人だよね? だぁれ?」
「国王とその息子だ」
「ほぅあ!?」
国王はともかく、その息子って第一王子じゃないよね?
第一王子って『フルフル』の攻略対象の一人で、高等学院に留学してくる人なんだけど!
レヴァール国には他にも王子が居た気がするしそっちだよね?
国王と第一王子が同時に魔国に娘が出来たからって、その生誕半年記念祝賀会に合わせて遊びに来るとかないよね!?
「む、息子様のお名前は?」
「ドルドア=ランファ=レヴァールだ」
「おぅふ」
思いっきり攻略対象じゃん!
「高い魔力、母親譲りの美しい容姿、父親譲りの文武共に優れた才能を持っているな」
はい、存じております。
『フルフル』では人気キャラで、味方に欲しい、でも敵陣営でのお色気シーンも見たいと数々の乙女を悩ませた攻略対象だよ。
とはいえ、
流石の公式お色気担当と言われてもその年ならまだかっこかわいい子供のはずだよね。
「パパはレヴァール国の王様と仲がいいの?」
「あの国には我が国の魔晶石を輸出しているし、あの男は子供のころから知っているからな、それなりに付き合いはある」
「魔晶石……」
それって『フルフル』でステータスアップするための冒険時に体力や魔力回復とか、敵側の戦略の予想するために神に祈りを捧げる際に使うアイテムだよね。
魔物の体内で発生する魔石を加工したものだけど、魔国の産業の一つなんだ。
魔力がある人ならだれでもがんばれば魔晶石に加工できるけど、持っている魔力とか技術力とか、そもそも無茶苦茶時間がかかるから、課金アイテムで買う人が多かったんだよね。
魔晶石一個作るだけでどれだけ早くても一週間かかるし、その時のレベルとかステータス次第で出来が変わって来るもん。
「魔晶石を産業にするって、そんなにたくさん使うものなの? どんな使い道があるの?」
「基本的には魔道具の燃料だな。この城に使われている魔道具も魔晶石をエネルギーとしている物が殆どだ。他にも装飾品に使うな」
「そうなんだ」
前世で言うなら電気とか電池みたいなもの?
魔道具自体は『フルフル』でもあったから違和感なく使っているけど、そうか、燃料が必要なんだ。
オルクスと話している間に今度は服に合わせる装飾品が用意される。
私が小さいからっていうのもあるんだけど、ゴテゴテした宝石のついた装飾品は一切ない。
小さな宝石や魔晶石をうまく組み合わせた華奢な装飾品ばかりだけど、うん、絶対高い。
この世界に転生して半年、体の成長が一切ないから採寸も子供のくせに頻繁にする必要もないけど、だからって……。
ちらりとラックにかけられたドレスなどを見てため息を吐きそうになる。
本当に、本当に、本当にお金持ちの感覚ってわからない。
幼女相手にいくらつぎ込んでいるのよ。
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