プロローグ3
基本は生徒、そして教師だけれども、ステータスの成長具合によっては早期に高等学院や王宮関係者との接触が出来て引き込める可能性も発生する。
この時点、すなわち中等学園生活の三年間でどれだけ自分の味方を作れるかで前哨戦の結果が変わる。
そして『フルフル』で油断できないのが味方に引き入れた攻略対象の裏切り。
好感度が足りない、ステータスが足りないという他、既定のイベントをこなさないといった条件により味方のはずの攻略対象が敵に寝返ったり姿を消したりする。
しかしながら敵に寝返る事で発生するイベントや、課金する事によって寝返った攻略対象を再び取り戻すイベントもある為、あえて寝返る選択肢を選ぶユーザーもいる。
それに、こちらも課金要素ではあるけれども、元々敵側の攻略対象を引き入れるというイベントもあるので、前哨戦などであえて味方に引き入れない事もある。
しかも、
敵陣営、
妨害工作もするけど、それは
そのせいか、ユーザーの声として某板では敵陣営でプレイしたい、
まぁ、
ちなみに私も、運営に
攻略対象に作戦、戦略、工作、戦闘を任せて安全圏から指示を出すヒロインより、自分で動く
一部で
それにしても、『フルフル』開始しているのか。
「見てみたいなぁ」
ポソリと言うと、オルクスが「なぜ」と聞いてくる。
特に理由はないというか、純粋に『フルフル』ユーザーとして間近でイベントを見たいだけなんだよね。
それに、高等学院編が始まるころにはオルクスが魔国からの使者ということで、ペオニアシ国に魔国の公爵と身分を偽って行くはずだから、ついていければいいなって思っているんだよね。
でも、よく考えると魔王が公爵を名乗るのはともかく、魔国を離れてペオニアシ国に行くのって大丈夫なの?
「見たいって言うのは純粋に好奇心だけど、乙女ゲームの予定だとパパはペオニアシ国に公爵と身分を偽って行く予定なんだよね」
「……ふむ、確かにペオニアシ国より我が国と交流を図りたい、具体的には外交的に縁を結びたいという話はあるな」
「うんうん、それをきっかけにパパがペオニアシ国に行って、
目を輝かせて言う私に、オルクスは軽くため息を吐き出す。
常に無表情だけれども何を考えているのか今はわかりやすい。
あからさまに面倒だと顔に書いてある。
退屈な日々を少しでも紛らわせるために、喜んでペオニアシ国に遊びがてら行くはずなんだけど、おかしいなぁ。
あ、でも私という存在が居るおかげで退屈は紛れているから、ある意味行く意味がない?
乙女ゲーム全体的にオルクスが継承権争いに参加しないこともあるから、ペオニアシ国に行かなくてもいいのかもしれないけど、私は『フルフル』のイベントを間近で見たい。
「しかし、その乙女ゲーム通りに私がペオニアシ国に行ったところで、ライラはその姿だ。関わる事は難しいのではないか?」
「……そう言えばそうね」
確かに見た目が3~5歳の私では、中等学園や高等学院に潜入してというのは難しい。
オルクスの話だと、訓練すれば外見年齢なんて操作できるそうなんだけど、出来るかなぁ?
「それに、ペオニアシ国の中等学園や高等学院に通うのは貴族のみ。ライラは生まれて半年しか経っていない事もあり、マナーやそもそもの知識不足の問題もあるぞ」
「……いや、それは……うん」
確かに、私の作法や知識って前世で身に着けた記憶の物だし、この世界の貴族のマナーなんてさっぱりわからないんだよね。
『フルフル』の攻略対象の知識はあるんだけどな。
もっとも全員の情報を徹底的に知っているわけじゃない。
だって、攻略対象って100人ぐらい居るんだよ? 全員を覚えていたら変態なんじゃないかな?
攻略対象じゃない女性キャラも存在するしね。
名前と顔グラは一致するし、どんな能力かぐらいは把握しているけど、どんなイベントを起こさないといけないとか、それぞれの好みのものが何かなんて覚えてない。
主軸というか、メインストーリーに関わる重要なイベントは毎回発生するから覚えているけど、個別の細かいのは無理。
「ライラが望むのならペオニアシ国に行くことも構わないが、そのままでは私の娘として勉強するだけだな」
「うぅ……」
凹む私に、オルクスは視線をよこすと小さくため息を吐き出した。
「準備や様々な手配を考えれば三年ほどかかる。それまでに外見年齢を操作でき、貴族として問題ないマナーと知識を身に着けることが出来れば、高等学院に入学できるよう手配してもいい」
「本当!?」
オルクスの言葉に再び目を輝かせると、オルクスは部屋に控えていたメイドや侍従、専属護衛騎士にすぐさま私の勉強用の講師を手配するように指示を出した。
仕事早くない?
「さて、ライラ」
「なぁに、パパ」
「お前の勉強はともかくとして、今日は大切な日だ」
「……それは、私が生まれて半年記念日だから?」
「ああ、何よりも優先すべきことだな。既に会場の準備も出来ている」
うん、だからね……。
「毎月お祝いしてもらわなくてもいいんだけどなぁ」
「ライラ」
「ひゃいっ」
僅かに低くなった声に思わず声が上ずってしまった。
「お前が私の娘になった重要な日だ。祝わないという選択肢はない」
いや、だから付き合いたての恋人記念日じゃないんだから……。
「お誕生日のお祝いは年に一回が普通なんじゃないかな?」
「それは国を挙げて盛大に祝う予定だ」
「止めて」
何それ恥ずかしい。私が本当に魔王であるオルクスの娘ならともかく、種族も違う義娘のようなものなんだから、そんなことしないで欲しいんだよね。
確かに私が接触する人は私の事を姫って呼ぶし、丁重に扱ってくれるけどね。
だけども私が魔王の地位を継げるわけでもないし、希少種の
「誕生日はしっかりと祝うのが親の役目なのだろう」
「誰に聞いたの」
「ネルガルだな」
その言葉に思わず部屋の中に入ってきていたネルガルを睨むけれども、爽やかな笑顔を返されるだけだった。
ネルガルも攻略対象なんだよね。味方になる条件はオルクスを味方につける事。
私という存在が居なければ、ネルガルはオルクスの専属護衛騎士だったわけだから、セットで付いてくるのは当然と言えば当然だけど。
今の状況は私の専属護衛騎士になっちゃったし、どうなるんだろう?
そもそも魔族関係の攻略対象者って、味方に引き込んでいてもオルクスが敵側につくと寝返ったり、陣営から離れて姿を消したりする。
これは、オルクスが魔王であることが関係しているんだけど、魔族は魔王に絶対服従。
敵対する事は本能的に無理っていう設定があるせいなんだよね。
それだけ魔王種という種族が魔族にとって重要と言うよりも、根幹に関わっている存在なんだけど、乙女ゲームではそこまで言及はされてない。
それも仕方がないか、『フルフル』は冒険・戦略・恋愛シミュレーションゲームだから、他国である魔国の事情なんて関係ないよね。
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