ギャルの心音――好き好き好き大好きの囁き
「いいよ、君からキスして」
桜色の唇が前の間にあった。
ギャルなだけあって、唇の艶とかプルっとした質感があった。あの唇を奪えるのか、俺が。
異常なほど心拍数が上がる。
「ドキドキしているんだね。あたしも心臓が壊れちゃいそう。聴く?」
そうだ、心臓の音を聞くと落ち着くと聞いたことがあった。――とか思考を巡らせていると、真帆は立ち上がった。
そして、俺の頭を抱き寄せ、自身の胸へ押し当てた。
緊張で感触とか味わっている余裕はなかった。それよりも真帆の心音が凄いことになっていた。
ドキドキドキと破裂しそうなほどの音が響いていた。
これが……真帆の心臓の音。
なんだろう、落ち着く。
こう“ぎゅっ”とされている状況もだけど、これほど心音が安心感をもたらすものだとは思いもしなかった。
「どう、かな……。うん、良かった。しばらく、こうして気持ちを落ち着かせようか」
俺は同意した。
こうしているのがこんなに幸せなことだとは予想外すぎたからだ。
五分、十分と長い時間そうしていた。
「うん? もういいの? ……分かった」
満足したところで離れてみると、俺は随分と落ち着いていた。
「良かった。あたしも君を抱いていたら落ち着いちゃった。体の相性とかいいのかも」
ギャルの心音を聴かされるという貴重な経験ができた。ついでに、あの胸にも挟まれていたんだよなあ。緊張しすぎてまったく記憶にないけど。
「キス、どうしよっか。――そかそか、最後がいいのね。分かった、じゃあ……君の好きにしたらいいよ」
今度は俺が好きにしていいらしい。
なら、俺に向かって『好き』とか連呼して欲しいと頼んだ。
真帆は快諾してくれた。
「もう君のこと、ずっと前から好きだよ。うん、実はね、海の家に同じ学校の男の子がいるって知ってたんだ」
そうだったんだ。
「前から少し気になってはいたんだ。でも、助けてもらって嬉しくて……だから、好き。すっごく好き」
抱きついてくる真帆は、俺の耳元で囁いた。なんて心地よい癒し系ボイス。真帆はギャルだけど、声には品があった。
そんな声で『好き』とか言って貰えるとか、泣けるほど嬉しかった。
「好き、好き、大好き。はぁ……ちゅ~したくなってきちゃった。はぁ、はぁ……」
真帆は少し興奮したのか、呼吸を乱していた。
そんな耳元で……くッ。
たまらない。
「どうしよう。なんか体がヘンになってきちゃった。君のせいだからね。でも、好き。好きすぎて辛い。君のことがこんな好きなの」
俺は押し倒され、更に耳元で『好き』を貰った。
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