親父の嫁にと育てられた女の子が、親父が結婚して息子までいたので息子の俺の許嫁になった件~しかもその女性がウチの学校の新任教師? えっ、しかも妹付き!?~
第3話 旦那様も呼びもお兄様呼びもどちらも良いものですよね
第3話 旦那様も呼びもお兄様呼びもどちらも良いものですよね
俺は乗せられた車の座席で頭を抱えていた。
「……つまり俺の親父は大財閥の御曹司で、許嫁の女の子がいたけれど、ふらっといつものようになくなった挙句、10年後戻ってきた時には 結婚して子供(俺)までいたと。
仕方がないから俺の祖父にあたる人はその女の人と俺を結婚させることにしたと。
で、その人が御剣先生だったわけだ」
「そういうことですね。ご存知なかったんですか?」
「……うん。でも色々納得は行った」
6歳の時、急にド田舎から都会に引っ越したことや、親父があんなんでもお金に困ったことなんかないことなど、色々と不思議に思っていたことがあった。
運転中の紳士が前からつぶやく。
「京花お嬢様が6歳の時に小笠原様の父上は失踪してしてしまいました。
それからもお嬢様は、あなたの父上の妻になるのだと日々努力をしておりました。
……それはもう不憫なほどで」
「 それなのに10年経って帰ってきた時にはお嫁さんと
あの時のお姉さまは見ていられませんでしたわ」
そう言って御剣はわざとらしく目元を抑える。
対して俺は、自分の父親の所業に身の置き場もないほど縮こまるしかない。
「……あの、御剣さん?」
「雪花」
「……はい?」
「雪花とお呼びくださいお義兄様」
「……雪花さん」
「…………」
「……じゃあ、雪花ちゃん」
「……まあ良いでしょう。
それで何ですか? お、義、兄、様?」
俺は覚悟を決めて言った。
「親父のやったことは悪いことだと思うし俺も申し訳なく思う。
だけど突然こんな話を聞いて、いきなり結婚しろだなんて言われてもそれは無茶だ」
「あら、姉はお好みではありませんか?」
「いやそういうことではなく」
「なんなら私でも構わないのですが」
「……どうしてそうなる!?」
「 大切なのは家同士の繋がりですので、誰がというのははわりとどうでもいいんですよ」
御剣改め雪花ちゃんはこう続けた。
「ただそうするとお姉さまは2回も続けて振られることになるわけですね。……お姉さまかわいそう」
そう言ってまたわざとらしく目元を抑える。
おい止めろ、チラチラこっちを見るな。
だが、そう言われて俺は若干覚悟が削がれる。
「……いや、でも。全く知らない人と結婚するってのは抵抗があるよ」
「では今から知り合えば問題ないですね」
「知り合うってどうやって?」
「 一緒に住めばいいんですよ」
そう言うと雪花ちゃんはにこりと微笑んだ。
……全く役に立たない俺の勘だが、今回ばかりは警報を発している。
ああ、分かってる。
きっと家に帰れば、またろくでもないことが待ち構えているのだ、と。
車に揺られることしばし、愛しの我が家に帰り着くと、そこでは引っ越し業者がたくさんの荷物を家に搬入しているところだった。
「……なんだこれ?」
「私とお姉さまの荷物ですよ」
「どういうこと?」
「ですから。今日から私とお姉様がお義兄様の家に住まわせていただくんです」
「え!?」
「 早速お邪魔いたしますね」
「えっ。ちょ、ちょっと!?」
そう言うと雪花ちゃんは業者の人の脇をすり抜けて家の中に入っていってしまう。
慌てて雪花ちゃんを追いかけて家の中に入ると、居間に母さんと雪花ちゃんと、何故か御剣先生までいた。
「御剣先生?」
こちらに気付いた御剣先生は、こちらを向きお辞儀すると
「今日からお世話になります
と言ったのだった。
……蛇に睨まれたカエルというのは、こういう気分なのだろうか。
****
それからしばらくして引越し業者が帰ったあと、俺たち4人は居間のソファーに向き合っていた。
主に御剣先生が変な空気を放っている。
「……それで母さんは知っていたのか」
「知ったのはかなり後になってからだけどね~。
はじめはうちの実家にお父さんが転がり込んできたのが始まりね」
「なんで俺に黙ったんだ」
「だって信じないでしょ、お父さん見てたら」
「……それもそうか」
俺は一発で納得した。
「俺のおじいさんって人は? 会った覚えないんだけど」
「 あら会っているわよ。こっちに来た最初の頃に。 覚えてないかしら」
「……あの頃は、こっちの環境に慣れるのに必死だったからなあ。覚えてないや」
俺はそこで話を戻す
「そんなことより母さんはいいの? 俺が御剣先生と結婚することになって」
「母さんは良いも悪いもないわよ。それは2人で決めることじゃないかしら」
この人は知らんぷりを決め込むつもりだ。俺はそう思った
俺は御剣先生に視線を移すと尋ねる。
「御剣先生は……」
「京花と呼んでください旦那様」
「……京花さんはそれで良いんですか?」
「……正直思うところはあります」
(ですよね~)
「ですがその大部分は旦那様のお父上に対してで あって旦那様に対してではありません」
「……そうですか。……ところでその旦那様っていうのはちょっと……」
「では一さんと」
京花さんは「そういう訳で」と咳払いをすると真っ赤になってこう言った。
「不束者ですが末永くよろしくお願いします。一さん」
その仕草に俺は不覚にも、可愛いと思ってしまったのだった。
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