俺とお前の卒業式

南沼

卒業式にて

「先輩の第二関節ください!」


「第二ボタン? いいよ」


「違います。第二関節ですよ」


「え? 何言ってんの?」


「だから、先輩の第2関節をください」


「え、ちょっと待ってよ。それに人気のないところに連れてきたのはいいとして、なんで俺、木に縛り付けられてるの?」


「だって、先輩暴れるでしょう。きっと痛いだろうし」


「よくわからないけど、痛いことするの?」


「第二関節取るんですよ? 痛いですよ、きっと」


「待って、待ってってば、何で君ペンチなんか持ってんの」


「何回も言わせないでください。先輩の第二関節をもらうためですってば」


「あの、だから、第二関節取るってどういうこと?」


「もういいです。先輩ったら馬鹿みたいにおんなじこと聞いて。もう知りません、私勝手に取っちゃいますね」


「うわ、待てよ、何するんだよ」


「ほら、もう諦めてください。手をしっかり握っても無駄です。ペンチでこじ開けるから余計痛いだけですよ」


「もしかして、それで指をねじ切るのか?」


「もう、先輩はほんとにお馬鹿さんですか? 第二関節だけ取るって言ったじゃないですか。私は別に第一関節も第三関節も要りませんから」


「第二関節だけって、だからそれってつまり俺の指の根元からちぎり取るってことだよな?」


「大丈夫ですよ。うまくやりますから」


「うまくやるって、何だよそれ。どうやるんだよ」


「為せばなるって言うじゃないですか。何とかなりますよ」


「もしかして、前にも誰かに試したことがあるとか?」


「やだなあ、私からこんなことするの先輩が初めてですよ。女の子に何言わせるんですか」


「お前絶対頭おかしいよ」


「失敗したって大丈夫ですよ。だって指は10本あるんだし、それに私足の指だって別にかまいませんから。ほら、19回も失敗できる」


「やめてくれよ。勘弁してくれ」


「だーめ。やめません。一生の思い出にするんですから」


「何でも言うこと聞くから。お願いします」


「じゃあじっとしててください。では1本目いきますよー。えい」


「痛い、痛い」


「そんなに暴れるからですよ。おかげで失敗しちゃいました。今度こそじっとしててくださいね。えい」


「いやだ、助けてくれ」


「あーあ、また失敗。まあまだ2本目ですからね」


「痛い、痛い、もうやめてください」


「先輩もそんなに悲観することないですよ。よく考えたら第一関節第二関節なんて数え方は相対的なものでしかないんです。仮に先輩の腕が手首でしかなかったら、肘が第一関節で肩が第二関節になるんです」


「あなたが何を言っているのかわかりません。もう許してください」


「だから、ほら、先輩の体に3個以上関節が残っていれば理論上第二関節はなくならないんです。すごい、失敗し放題ですね」


「お願いですから許してください」


「あはははは」

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俺とお前の卒業式 南沼 @Numa_ebi

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