第34話「失恋」1/2

 夏休みに入って2週間がすぎた。

 部活もバイトもやってないオレはただただ暇で出された大量の宿題をもう消化させた。

 夏木は短期バイトを始めたらしくうちには全然遊びにこない。

 小倉さんとは時々ラインをするけどあれから会っていない。

 森くんとは・・・あれから全然音沙汰なし。

 計画しているお祭りまで会わずに過ごすことになりそうだ。

 ラインも全然。何か送ろうとスマホを手に取るけど迷うだけ迷ってやめてしまう。


「はぁ」

 夏休みに入ってため息が増えた。


「お兄ー!」

 ガチャッとドアが開きネネが入ってくる。

「お兄、まだ準備してないのぉ?! お願いしたじゃん! もー今日は待ちに待ったプリボのコンサートの日なんだから! 早く準備してね! 玄関で待ってるからね!」

 言いたいことだけ言ってバンッとドアを閉めて行った。

「・・・」

 はぁ、とため息をつきながら出かける準備を始める。


 今日はネネと母さんがプリボの夜部のコンサートに行く日。オレはいわゆるコンサート前に大量に買うグッズの荷物持ち。

 ネネだったらきっぱり断るとこだけど母さんに頼まれたらノーとは言えない。

 コンサートがあるたび買ったグッズを持って家に帰るだけのパシリをさせられる。

 



 電車を乗り継ぎ駅内の通路を歩き続ける。

「今日はやたら人が多いわね~」

「あれじゃない? ほら、プリボのポスター以外にバスケの試合のポスターも貼ってある。他にも」

 母さんとネネが歩きながら会話をする。オレはふたりの後ろをどーでもいい顔で付いて行く。

「だからなのね~。夏休みはいろんなところでイベントとか試合がやってるから混むのね~。いつもはパパが送ってくれるけど今日に限って仕事が入っちゃって~残念」

「それより早く行こう! 次の電車に乗り遅れちゃう」

 ネネがスピードを上げだし母さんが慌ててついて行く。

 ここの駅はいろんな電車の乗り継ぎ場だ。

 広くて迷路みたいで迷いそうになるけど、特にイベント会場やドームがある駅と繋がってるから便利といえば便利。(ショップもいっぱいある)

 

 バスケの試合か。

 森くん、プロの試合よく観に行くって言ってたなー。

 誘ったら喜ぶかな。

 ふと森くんの嬉しそうな笑顔が浮かぶ。 

 でも、告ったあとだから声かけずらい。いや、ここはそれは置いといて友達として誘うのもあり・・・。


 あれこれ考えていると視界に知ってる顔が入った気がして視線を走らせると、人混みの中に森くんの姿が。


 マジ?!

 こんな偶然ある?!


 声をかけようと一歩踏み出したところでピタッと足が止まる。

 人混みで見えていなかったけど、森くんのすぐ隣に小倉さんがいることに気づく。

 楽しそうに会話をしながら手を繋いでいる。


 手を繋いでいる?!


 決定的な現場とばかりにオレの脳裏に焼きつく。

 ただただふたりの楽しそうな顔が遠ざかっていくのを見ていることしかできないでいると、グィッと強い力で腕を引っ張られる。

「お兄! なんで突っ立ってるの! もうー行くよ! プリボのグッズ売り切れちゃうよぉー!」

 グイグイとネネに引っ張られながら歩く。振り返るもふたりの姿が人混みで見えなくなっていた。

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