Day24 絶叫
「怖い話をしようか」
「やだ」
「話する前から何」
「やだったらやだ」
アヤは断固拒否の構えで、ミツキの座っているベンチの端と距離を取るようにもう一方の端に寄った。天井に吊るされた青い羽の扇風機がぶんぶんと唸りながら首を振り、それに煽られた風鈴がチリンチリンと鳴る駄菓子屋の店先。アヤとミツキの前には、よく冷えたあんみつーーの入っていた、今は空になったガラスの椀が並んでいる。氷入りの麦茶を一口飲んだミツキは、お構いなしに口を開いた。
「これは私が就職して、夜遅くまで働いていた頃のことです」
「ミツキ働ける歳じゃないでしょ」
「私はその日疲れ切って、帰りの電車で寝てしまいました」
「わかった、きさらぎ駅だ」
「ネタバレ早くない? てか怖い話苦手なくせになんで知ってんの」
「有名じゃん。映画にもなったし」
「何だ、つまんない」
アヤはぷいとそっぽを向いたまま麦茶をぐいぐいと飲んだ。ミツキはざーんねん、と呟く。夏の風物詩、アヤの金切り声は聞きそびれた。
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