Day12 すいか
はたはたと大粒の雨が緑の葉を叩いている。畑の畝を覆った大きな葉は、茹だるような暑さの後の雨を喜んでいるようだった。その葉と葉の間に、大きなすいかがごろりと実をつけていた。アヤとミツキはお揃いのレインコートを着込んでゴムの長靴を履き、はさみを手に畝と畝の間の隙間に踏み込んだ。
「ねえねえミツキ。すいかって爆発するんだって」
「何それ」
「あんまりよく知らないけど、本で読んだの。たまに勝手に爆発するんだよ」
「アヤ、それどこで読んだの」
「忘れちゃった」
「意味ないじゃん。それ本当なの?」
雨でゆるくなった土に、長靴の足跡がつく。同じサイズで同じ形の足跡が二組。それは傍目には見分けがつかず、一人がたくさん歩いたようにも見える。
「ミツキ、これ美味しそうじゃない?」
「そういえば、熟練の職人は叩いただけですいかの中身が美味しいかどうか分かるんだって」
「ミツキこそ知ったかぶりじゃん」
「違うし。八百屋のおじさんから聞いたんだから間違いないもん」
「ずる」
「別にずるくないでしょ」
ミツキはこんこんとドアをノックするようにすいかの大きな果実を軽く叩いた。二人はその音を吟味したが、中身が美味しいかどうかは分からなかった。
結局ミツキはいくつかこんこんと叩いてみた果実のうち、本人がなんとなくいい音だと思った比較的小ぶりな実をはさみで切った。アヤの方は見た目重視で、張りのある大きな実を選んだ。腕に一つずつ抱えたすいかは、大粒の雨を浴びて表面の土がとれ、曇り空の下でもつやつやと輝いて見えた。
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