Day8 さらさら
ひどく赤い夕暮れだった。焚き火のような色の空を、ミツキは学校のグラウンドの真ん中から見上げていた。
アヤがどこからか歩み寄ってきた。グラウンドの砂利を、スニーカーが踏みしめる音。晴れ渡った昼間の熱で乾いてさらさらになった砂は、二人の足元に細かな煙を小さく舞わせた。
「赤いねぇ」
「真っ赤だねぇ」
二人は呟いて空を見ていた。カラスがカァカァと鳴きながら空を横切っていく。学校を囲うフェンスの横を、車が時折走り抜けていく。遠くから踏切の警告音が聞こえる。平凡な夏の夕暮れのように見えて、昨日とは少しだけ違う夕暮れ。日の沈む時間は違うし、カラスは今の時間に空を横切らなかったかもしれない。車も、昨日は同じ時間に横の道を通らなかったかもしれない。踏切が鳴るのは同じだったかもしれないが、もしかすると、不測の事態があって違ったかもしれない。それはアヤにもミツキにも分からない。
昨日とは違う空を、アヤとミツキは眺めている。明日も、そのまた明日も、違う風景が見えるのだろう。どこかでそれらの風景を見られなかった人がいる。彼らの代わりに、アヤとミツキは空を眺めている。
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