Day6 筆
黄色のバケツ型の水入れは、ほかの子どものそれとは違った。ほかの子どもは透明な直方体で、中にいくつか仕切りが付いていた。パレットや筆を収納出来るようになっている。
それに比べるとアヤとミツキが持ってきた黄色の水入れは、筆を立てるにはよい高さではあるが、パレットや絵の具のセットを別のケースに入れなければならず、少々かさばる荷物だった。通学路でも2人だけ手提げの膨らみが大きかった。図画工作の教師には「……親御さんのを借りてきたの?」と懐かしいものを見る目をされたので、古いものであることは明らかだったが、他の子たちからすれば古いものが逆に目新しいこともある。
「アヤとミツキの水入れいいなー、かっこいい」
「えへん」
ミツキは素直に嬉しそうな顔をして、筆に水を含ませてパレットの水彩絵の具を混ぜた。青に少しの赤と、白。水をたっぷり。
「でもみんなのの方が便利だよ。絵の具バッグにぴったりだし、しまいやすいもん」
「アヤの手提げパンパンだったもんね」
ミツキは小さな口を尖らせる。筆で黄色と赤を混ぜた。
エアコンの効いた教室の窓からは、昼を過ぎてもなお照りつける太陽が、雲間から顔を覗かせていた。下校の頃には、少しは傾いているだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます