Day6 筆

 黄色のバケツ型の水入れは、ほかの子どものそれとは違った。ほかの子どもは透明な直方体で、中にいくつか仕切りが付いていた。パレットや筆を収納出来るようになっている。

 それに比べるとアヤとミツキが持ってきた黄色の水入れは、筆を立てるにはよい高さではあるが、パレットや絵の具のセットを別のケースに入れなければならず、少々かさばる荷物だった。通学路でも2人だけ手提げの膨らみが大きかった。図画工作の教師には「……親御さんのを借りてきたの?」と懐かしいものを見る目をされたので、古いものであることは明らかだったが、他の子たちからすれば古いものが逆に目新しいこともある。

「アヤとミツキの水入れいいなー、かっこいい」

「えへん」

 ミツキは素直に嬉しそうな顔をして、筆に水を含ませてパレットの水彩絵の具を混ぜた。青に少しの赤と、白。水をたっぷり。

「でもみんなのの方が便利だよ。絵の具バッグにぴったりだし、しまいやすいもん」

「アヤの手提げパンパンだったもんね」

 ミツキは小さな口を尖らせる。筆で黄色と赤を混ぜた。

 エアコンの効いた教室の窓からは、昼を過ぎてもなお照りつける太陽が、雲間から顔を覗かせていた。下校の頃には、少しは傾いているだろうか。

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