帝国で皇帝の娘と出会う
「……ふぅ」
今日は帝国でディランに指示された武器を作っている。戦争が激化しているのか、日に日に要求される武器の量は増えていって一息つく暇もない。でも、これくらいで弱気になるわけにもいかないな。ドロシーを守るためにも、これくらいさらっとこなしてやる。
「…………」
「…………それ、面白い?」
「…………え!?」
トンチンカンと剣を叩いていたら、ふと女の声が聞こえてきた。ふと顔を見上げてみると、そこには一目見て高貴なものだとわかる服を着ている、幼さがまだ残っているものの、つい目を引く端正な顔立ちをしている少女が少し離れたところからじーっと俺のことを見ている。集中してたから全然気配に気づかなかったな……。
あれ、でも見張りはどこいったんだ? 誰かがここに来たら普通追い返すはずだよな?
「お、面白いと言われると……まぁ、面白いよ」
「そうなの。じゃあ、私にもやらせてほしいな」
「いや、それは危ないからできない。ほら、ここは子供のくる場所じゃないから帰った帰った」
「いや。やらせてくれないと兵士にあなたが悪いことしてたっていう」
「な、なんでそんなことを……」
「だって私は皇帝の子供だから。皆私のいうことを聞くべきなの」
「……へ」
つい俺は口をあんぐり開けて驚きをあらわにしてしまう。そうか、だからこんな高貴な雰囲気をまとった子供だったってことか! だから見張っているはずの兵士に追い返されることもなくここに来れたことも納得がいく。
「だからやらせてくれるよね?」
「……わ、わかりました。でも、危ないことはさせられないので一緒にやりましょう」
「そう、まぁいいわ」
子供らしからぬ落ち着いた雰囲気で、少女は俺の隣に来て早くやらせろと目配せしてくる。皇帝の子供にいい加減な態度を取るわけにはいかないので、俺は丁寧に簡単な作業を教えてあげた。
「結構難しいのね、これ。あなたはたくさん武器を作らされて大変ね」
「もう慣れっこですから」
「そう。さすが、ドロシーを買った男なだけあるわね」
「……え、どうしてそれを。そ、それよりドロシーのことを知っているんですか!?」
「当たり前よ。良くも悪くも、私たち皇帝家はプライアー家と親密な関係だもの。ドロシーは私が小さい頃によく遊んでくれたわ」
「そ、そうなんですか……」
皇帝はディランの言いなりだってドロシーが言っていたから、親密な関係なのはその通りなんだろう。
「……ねぇ、ドロシーは元気?」
少し真剣な表情で、少女は俺にそんなことを聞いてくる。
「昔と比べたら正直変わってしまったところはありますけど……。それでも、だんだん元気を取り戻しつつあると思いますよ」
「……良かった。……私があの時守れなかったことは今でも後悔しているけど、ドロシーがあなたと一緒で幸せに過ごしているなら、何よりだわ」
それを聞くと少女は安堵した様子を見せる。もしかしたら、この人はドロシーのことを守ろうとしてくれたのか。帝国側にも、ドロシーのことを守ろうとしてくれた人がいたってことを知れて良かった。
「あなた、なんて名前? 私、あなたのことをドロシーを買った人ってことしか知らないの」
「え、俺はエリック・モンゴメリーです」
「エリック……ね。私はセシリア。そうだ、ドロシーにこれを渡してくれないかしら。もちろん、ディランにバレないようにね」
「……手紙?」
セシリアが服のポケットから何やら手紙を取り出して、それを俺に渡してくれた。ドロシーに渡してくれということは、何か彼女に伝えたいことがあるのかもしれない。そうか、そのために俺に会いに来たってことなのかも。
「謝罪の手紙よそれは。それと……あとは、ドロシー次第といったところかしら。もちろん、彼女が嫌がったら無視してくれて構わないわ」
「わ、わかりました。しっかり渡しておきます」
「ありがとう。……じゃあ、そろそろディランが来そうだから私はそろそろ帰るわ。ドロシーのこと、頼んだわよ」
そういって、セシリアは工房を去っていった。やっぱりセシリアはドロシーのことを気にかけているみたいだ。でも、セシリアもディランがいる影響でなかなか思うように行動できないんだろう。
「……よし」
改めて気合を入れ直して、俺はまた武器作りに勤しむ。ドロシーに無事手紙を渡すためにも、さっさと仕事を終わらせないとな。
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読んでいただきありがとうございます! また、更新が遅くなって大変申し訳ございません。
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