ドロシーを守るためにトレーニングをする


「……332、333、334……」


 今日は帝国に行く必要のない日。そんな日にはドロシーとただただ一緒に過ごしていたい気持ちがあるものの、そうも言っていられないのが今の現状だ。万が一ディランがドロシーに刺客とかを差し向けて襲おうとした時に守れなかった、なんてことには絶対にしたくないから。


 そのために俺は今日、朝早くからトレーニングをしている。元々師匠のところにいた時は毎日やらされていたけど、独立してからはたまにしかしていなかった。でも、今はドロシーを守るためにはできること全てしないと気が済まない。だからこそこうして朝から汗を流してトレーニングをしているわけだ。


「あ、エリック……朝ごはん、ここに置いとくね」


「おお、ありがとうドロシー」


 家の外でトレーニングをしていると、ドロシーが朝食を持ってきてくれた。俺がトレーニングをすると聞いたら今日は自分が朝ごはんを作ると言ってくれて、美味しいオムレツとかを作ってくれたみたいだ。よし、ここは一旦休憩してご飯を食べるとするか。


「相変わらずドロシーの料理は美味しいな。こんな料理を食べられて俺は幸せ者だ」


「も、もう……。……エリックは、この後もトレーニングするの?」


「ああ、今日は一日中しようかなって思ってる。あ、昼と夜は俺が作るよ。朝ごはん作ってもらったし」


「ご、ご飯は私が今日全部作る! エリックがあんなに頑張ってるんだから、少しでも負担は減らしてあげたい……」


「……ありがとう、ならお願いするよ」


「う、うん! そ、それと……トレーニングしてるとこ、見てていい?」


「え?」


「え、エリックが頑張っているところを見ていたいの。それに……すぐ近くで応援したから」


「ドロシー……」


 ドロシーが恥じらいながらもそう言ってくれたことが、俺は本当に嬉しかった。それなら俺もドロシーがもっと応援したくなるようトレーニング頑張らないといけないな!


「808……809……810……」


「が、頑張れ……頑張れ、エリック!」


 それから俺はドロシーに応援してもらいながらトレーニングに励んだ。師匠直伝のトレーニングはめちゃくちゃきついのでついつい意識が遠くなりそうな時もあったが、ドロシーがすぐ近くで応援してくれているおかげでなんとかこなすことができた。ああ、気づいたらもう夕方か……。


「す、すごいエリック……いっぱい頑張ったね」


「あ、ああ……師匠直伝のメニューだからな。今日はちょっとドロシーに応援してもらったから……すげー頑張れたけど」


「そ、そうなんだ……。そ、そしたら……頑張ったプレゼント、あげるね」


「ん? なんだドロシー……!?」


 クタクタで地面に倒れこんでいる俺の顔にドロシーが近寄ってきて、俺の唇に軽いキスをしてくれた。突然のことで俺はつい呆然としてしまい、ドロシーは顔を真っ赤にしていた。


「そ、それじゃあご飯作りに行くね」


 そしてドロシーはそそくさと家に戻っていってしまった。やっぱりキスしたことが恥ずかしかったんだろう。かくいう俺もまだ立ち上がれずに倒れこんだままだし。


 ……でも、これからもドロシーのためならなんだって頑張れる。そう確信することができた。


――――――――――

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