事件の前触れ

「あーあ、サイアクー。」



 その少女は、不機嫌もあらわにずかずかと歩を進めていた。



「ちょっと去年の成績が悪かったからって、ここまで居残りさせるぅ? 普通さー。」



 誰もいないのをいいことに、彼女は不平不満を声に出しながら歩く。



 ふとその時、校内にとあるメロディが響く。

 それを聞いた少女は、その表情にさらに不機嫌さをたたえた。



「やあねー、もうこんな時間。約束に間に合うかなぁ。」



 今日はこの後、友達と遊びに行くのだ。

 少女は駆け足に半開きの門に走った。





 ―――ざわりと、そこに一陣の風が吹き抜ける。




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