第2章 失踪
行方不明
その日は、朝から騒然としていた。
生徒たちはそれぞれ仲間内で集まり、ひそひそと何かを話している。
中には、泣き出している生徒も見受けられた。
教師たちは何やら
「何、誰か死んだ?」
のんびり登校してきた実は、率直な感想を口にする。
「わ、笑えない冗談言うな、馬鹿!」
隣から、晴人が慌てて突っ込んできた。
「だって……」
実は困惑顔をする。
縁起でもないことを言っているのは分かっている。
だがこの状況を素直に読み取るなら、どう考えてもそういう推測に至ってしまうと思うのだが。
そんな実の考えが伝わったのか、晴人は首をぶんぶんと激しく横に振った。
「いやいや、決めつけるのはよくないって。な? ……あ、華奈美!」
きょろきょろと辺りを見回していた晴人は、捜していた人物を見つけてその名を呼んだ。
呼ばれた華奈美は晴人に気付くと、一緒にいた友人に断ってからこちらに来る。
「ハルちゃん……」
「ごめんな、話してたとこ。一体、これはなんの騒ぎなんだ?」
周りは不穏なざわめきに満ちている。
華奈美は表情を曇らせると、晴人と実を窓際に誘導してから口を開いた。
「あのね…。二年の先輩が、二日前から行方不明なんだって。表向きには病欠ってことになってたんだけど、今朝先輩のお母さんが乗り込んできちゃって…。それで、一気に大騒ぎになっちゃったみたい。」
「行方不明……」
実は遠くにある会議室の方を見やる。
こんなに離れているのに、女性の泣き叫ぶ声がこちらまでよく響いてきている。
子供がなんの前触れもなく消えてしまったのだ。
その不安は、いかばかりのものか。
「ほんと……大変よね。」
実が見ている方向を追い、華奈美がそう言う。
気の毒だとは思うが、所詮は他人事。
この時は皆そんな心境で、誰もそこまでこの事件を深刻には捉えていなかった。
しかし、これは大事件の始まりに過ぎなかったのである。
翌日、受験対策の補習に出ていた三人の生徒との連絡がつかなくなったとの報告が学校に上がった。
その翌日には部活帰りの生徒が姿を消し、ついには教師の一人の行方も分からなくなってしまった。
最初の生徒が消えてから、わずか六日。
行方不明者の数は、八人にまで
どうせ、ただのお騒がせ事件だろう。
そう思っていた学園や数多くの生徒たちも、日を重ねるごとに、事の異常さをひしひしと思い知らされていくのだった。
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