第10話 窮鼠"猫被り"に噛まれる
港青人は思った。
最近、ちょっと生徒会長の様子が変わって来た事に。
「あら、また来てくれたのね"青人くん"」
「この前貰った提出物のチェックはもう終わってるわよ、"青人くん"」
「いつもきっちり仕事して貰って助かるわ"青人くん"」
「ねえ、最近クラスの雰囲気はどう? "青人くん"」
「――嘘吐かないで教えてね?」
(こっっっっっわ!)
主に悪い意味で。
(なんだなんだなんだ……!? 鶴見会長、急にこんな態度をあからさまに)
(俺そんな悪い事してたか? 確かに磯子の事は少し誤魔化して伝えたけど、それにしたって急激に)
(……これ、選択肢間違えたら殺されるやつなのでは……)
鶴見泉見とあの一件依頼、顔を合わせる度話しかけてきたり、名前呼びしてきたりでなんだかんだ側から見ればフラグ立った感じに明白な圧を掛けて来るようになっていた。
しかも満面の優等生スマイルで自分だけにというのが恐ろしい。お前はもうロックオン済みだぞと分からせようとしてるのが目に見える。
青人は考える。問題が起こる前に何とか波風立たない方法はないかと。
「あの、会長」
「何かしら」
「……週報で見たのですが、最近西校の方で"サイレント"の被害が増えてるみたいじゃないですか? 今週だけでも10名は越したとか。これは本校の生徒会として協力が必要――」
咄嗟に考えた逃れるための言い訳に、泉見はにっこりと笑いながら返した。
「あら、ちゃんと把握してくれたのね。でも安心して。既に東校の生徒会に応援要請済みよ。対応策も含めてね」
「…………」
しかし話題を逸らす事をそう簡単にさせないのが泉見。青人ごときにかわせる相手じゃない。
「…いやでも、本校側で視察というか、現場の温度感とか知っておくのも大事だと思うんですよ。俺、あそこら辺に昔住んでた事あって、割と元の治安悪いところだったし」
「ふむ、一理あるわね」
(どうだ、逃げられるか)
青人の言葉に考える素振りを見せる泉見。こちらとしては、そのまま分校の被害調査でも至急して欲しいものなのだが、見るに、明らかに余裕がありそうな様子の泉見。
これは負けたか。
「なら青人くん、あたしと一緒に西校にいきましょ」
「……へ?」
「他の生徒会員は、今あまり分校に行ってる程手が空いてないの。貴方の提案は確かに正しい。だからこそ、発案者と責任者であるあたしが同行した方がより効果的だと思うのよ」
「は、はあ」
この時ばかりは青人も泉見が何を言ってるのか分からなかった。だって話題逸らそうとしただけなのに、一緒に現地偵察に誘われたのである。本来の目的が全くもって達成されてない。
(あ、やべ、藪蛇……)
そこで泉見がニコニコしてるのにようやく気付いた。墓穴を掘ったのは自分である事に。
「――逃げられると思わない事ね、青人くん」
耳元でそんな囁きが聞こえた。
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