第4話③
今揃うヘスペリデスが全員集まった。
「では、流れを説明する。我が聞き取りを行う。お前たちは聞かれたことに答えて、言いたいことがあるなら好きに証言しろ。我が証言をまとめ、確定事項を集めて状況を整理する。予め言っておくが、犯人捜しも失せ物探しも専門外だ。我はこじれた状況を整理するために来た」
早速、ラドンは事の概略を求めた。
ヘスペレトゥーサが手を上げた。
「私が発端です~。大事な大事な果物が無くなってたの~」
「それでヘスペレトゥーサが犯人捜しを始めたの」
「大事な果物とは、まさか黄金果実か?」
「違うわ。ヘスペレトゥーサは食いしん坊なの。無くなったのはただの果物よ」
「そうです~」
「ふむ。先程揉めていたときにも気になったが、自分が食べた訳ではないと思う根拠はなんだ?」
「そんなの簡単よ~。だって、お腹が空いてるもの~」
「……はあ?」
ヘスペレトゥーサは自身の空腹感覚に絶対的信頼をおいているのか、誇らしげに胸を張る。
空いた口が塞がらないラドンに、クリュソテミスが同情する。
「ラドン、諦めろ。この大飯喰らいはこういう奴なんだ」
「でも、結構バカに出来ないよ? ヘスペレトゥーサの腹の虫は正確だからね。僕はよく頼りにしてる」
「それはアタシも保証しますわ。体調管理にはスケジュール管理が大事ですから、正確な時間感覚は重宝します」
「わたしも支持するわ。ご飯の準備するタイミングはヘスペレトゥーサがいつも教えてくれるの」
【確定】ヒュギエイア、アイグレー、リパラーがヘスペレトゥーサの腹時計を保証した。
「じゃあ、ヘスペレトゥーサの腹時計は正確だとしておく。それで、ヘスペレトゥーサの果物がどうなったか知ってる奴は居るのか?」
ラドンの質問に誰も答えない。どうやら誰も行方を知らないらしい。
アレトゥーサが沈黙を破って別の質問をする。
「ずっと気になってたんだけれど。そもそもヘスペレトゥーサはどんな果物を用意してたの? アタシ、果物が何だったのかすら知らないの」
「僕も知らないな」
「ワタシも」
「あたしもだ」
【確定】ヘスペリデスたちはヘスペレトゥーサが何を食べようとしていたのか知らない。
「探し物が何かすらわからないなんて話にならない。おい、ヘスペレトゥーサ」
「はい~?」
「お前が食べようと思っていた果物はなんだ」
「さあ?」
「ちょっとヘスペレトゥーサ。あんたが普段からワンテンポ遅れてるのはよ~く知ってるけど。今はそういうタイミングじゃないの。さっさと答えなさい」
クリュソテミスに詰め寄られるが、ヘスペレトゥーサは困り顔を浮かべるばかりだ。
「だから~知らないんですよ~」
「はあ?」
「どういうことだ。自分が食べる分だったんだろうが?」
「そうよ~。けど、今日の分はリパラーが用意してくれてたから~」
「何?」
全員の視線がリパラーに集まる。
当のリパラーはビックリして、「あらあら」と首を傾げていた。
「……何のことかしら?」
「ヘスペレトゥーサ、ゆったりしすぎて遂に思考が逆回転してるんじゃないでしょうね!」
「何言ってるの、クリュソテミス~」
クリュソテミスのイライラが爆発しないようにアイグレーがなだめに入った。
その間に、ラドンはリパラーから証言を聞くことにした。
「リパラー、説明しろ」
「そう言われてもね。わたしも何のことだか……」
「リパラーが盗み食いしたってこと?」
アレトゥーサがそう口にした。
それにアステロペーが答える。
「それはないよ。だってリパラーは最近運動してるんだもん」
「そうなの? 皆知ってた?」
全員が首を横に振る。
何故か動き回りながらアステロペーが話し出す。
「隠れてやってるみたいだからね! けど、このアステロペーの眼は誤魔化せない。筋肉の付き具合が先月よりも多いんだ。観察してるとわかるけど、朝食前とか身体がほっかほかだよ。かすかに汗の匂いもしてたよ。早朝に鍛えてるんだね。けど、リパラー。鍛える箇所を限定するのは良くない。お尻や背中も鍛えるとイイ感じにお腹も――」
リパラーがアステロペーの顔を掴んだ。口を掴まれて、アステロペーはタコのようになっている。
「うふふふ……」
「やっぴゃり、だいえっふぉはただしく――」
かなりの圧をかけられているのに、アステロペーは懸命に体重管理には運動と栄養管理された食事が大事だと訴え続けていた。
エリュテイアが言葉を選びならが話す。
「えっと。つまり、リパラーはその、食事制限をしてたから果物を盗み食いはしない。それで合ってる、リパラー?」
「……ええ」
【確定】リパラーはダイエット中で果物を食べていない。
リパラーの容疑が晴れたことで、疑問は一つ手前に戻ることになった。
「なら、どうしてヘスペレトゥーサはリパラーが果物を用意してくれたなんていったの?」
「……おい、リパラー。お前は姉妹の中で飯作りをしているんだったな?」
「ええ。皆の分を作ってるわ」
リパラーがアステロペーの顔を握りつぶそうとしている。アステロペーはどこか喜んでいる。
二人の様子を無視して、ラドンが尋ねる。
「今日、お前は食事の準備をしたか?」
「もちろん、朝食も昼食もしっかりとね」
「なら、食材の中に果物はなかったか?」
「いいえ、食事には使ってないわ。けど、今日の晩御飯のデザート用に果物を保存して……まさか」
はっとしたリパラーはアステロペーを放り出して厨房に向かった。
やがてして、沈痛な表情で戻ってきた。
「……無くなってたわ、デザート用の果物が」
「「「そんな!!?」」」
ヘスペリデスは一斉に暗い顔になった。リパラーのデザートを楽しみにしていたようだ。自分の果物だと言い張っていたヘスペレトゥーサも落ち込んでいる。
「なら、もう一つ確定したな」
【確定】果物はヘスペレトゥーサの物ではなく、厨房にあったデザート用。
すると、アイグレーが声を上げた。
「あれ? 確か今日って、リパラーが外に出てたから厨房には鍵がかかってたよね」
「そうよ。鍵はわたしが持ってる」
「リパラー、お前が外に出たのはどれくらいだ?」
「確か、ヘスペレトゥーサにお昼を食べさせた後で、まだお菓子の時間の腹音を聞いてなかったから。うん、昼過ぎよ。そのときには果物はあったわ、間違いない。付け加えとくと、わたしは昼まで厨房で準備をしてた。だから、昼前の犯行はあり得ないわ」
【確定】厨房に忍び込めるのは昼過ぎのみ。
「なら、果物泥棒は昼過ぎにリパラーが出かける前に厨房へ入ったってことか」
「いや待て。誰でも厨房に入れたりしないのか。鍵が複数ある、別の入り口がある等」
ラドンの指摘にクリュソテミスが答える。
「それはないよ。食い意地張った娘が居るからね。盗み食いされないよう厨房の鍵は一つで、リパラー以外は開けられないのさ」
【確定】厨房はリパラーの鍵でしか開閉できない。ヘスペレトゥーサは盗み食いの常習犯。
「かなり状況が絞り込めた。後は目撃証言だ」
「何の?」
「昼過ぎ、リパラーが鍵をかける前に厨房に入った女が居ないかの証言だ」
ヘスペリデスの証言を集めて照らし合わせた結果、容疑者が三人になった。
ずっと会話に入るタイミングを逃し続けていたアイリカー。
顔に手の痕が残っているアステロペー。
途中から水瓶の水を鏡代わりに肌の状態を確認していたヒュギエイア。
残りの疑いが晴れたヘスペリデスとラドンは内心で思った。
『面倒なのが残った』
「でさ、ここからどうすんのさ?」
アレトゥーサの疑問にラドンが鎌首を捻る。
「……さっぱりだ。今日会ったばかりでまだ短時間だが、コイツらからまともに証言がとれる気がしない」
「ワタシたち姉妹への理解が早くてありがたいよ。まあ、ここまでやってきたみたいにやりましょ。変わらずワタシたち姉妹が手伝うからさ」
エリュテイアの言葉に他のヘスペリデスも同調した。
それに対して、ラドンは疑いの視線を向ける。
「……本当に他人を信頼しない蛇ね。浜で会った時からずっと同じ顔」
「蛇ではない。ラドンだ」
「はいはい。じゃあ、さっさと始めよ」
三人は横一列に並ぶ。右端に居るヒュギエイアへの取り調べが始まった。
「ヒュギエイア、昼飯後からリパラーが出かけるまでを説明しろ」
「今日は日光浴をする予定でしたからその準備をしていましたわ」
「どうして厨房に入った?」
「言ったでしょう、準備よ。カットオレンジを入れた水が定番なの」
「何? じゃあ、お前が果物を盗んだのか?」
「アタシはオレンジでオレンジ水を作っただけです。保存してありますわよ」
ヒュギエイアの証言を確認しにアイグレーが厨房へ走る。少しして戻ってきて、ヒュギエイアが言った場所に水瓶に入ったオレンジ水を発見したそうだ。
クリュソテミスが呆れて天井を仰ぎ見る。
「じゃあ何。ヒュギエイアが犯人だった、ハイ終わり? なんでさっき果物が厨房にあるって時点で名乗り出ないんだ、お前は?」
「あら、そうだったんですか? ごめんなさい、全く聞いてませんでした。けれど、それなら言い分があります」
「何だ、ヒュギエイア」
「果物はオレンジ以外にもあったわ。アタシはオレンジ以外使ってないわ」
ラドンがリパラーに顔を向けると、リパラーは頷いた。
「ええ、その通りよ」
「じゃあ、聞くが。ヒュギエイアがオレンジ水を作ったときには、まだ他の果物は残ってたのか?」
「はい。沢山残ってましたわ」
【確定】犯人の一人はヒュギエイア。しかし、オレンジしか使っていない。
次にアステロペーへの取り調べに移った。
アレトゥーサがヒュギエイアの件を踏まえて、事前にここまでの流れを説明してくれていた。その結果、事が容易に運んだ。
「うん! 厨房にあった果物ならいくつかいただいたよ」
「……。で、何か言い分があるんだろう?」
「今日は朝にランニングをして朝食後に筋トレをしてたんだ。昼からは遠くまで走ろうと思ってたから、途中でエネルギー補給が出来るように果物を貰いに厨房へ行ったのさ。リパラーは居なかったけど、沢山果物があったからそれを貰って走りに行ったの。とても気持ちよく走れたよ!」
「……初めてだ……馬鹿馬鹿しすぎて思考回路が軋む気分……」
頭が地面にひっついてしまいそうなほど項垂れるラドンに、エリュテイアとクリュソテミスが同情して何度も頷く。
「わかる。この二人相手にしてると、自分の知ってる世界が通用しない気がしてくるのよね」
「言ってる意味はわかるが理解したくない感覚だな。毎日だと慣れてくるぞ」
「……まったく有用ではない情報だ二人共。それでアステロペー。お前は果物を全部食べた、あるいは所持したのか?」
「運動前に大量の水分と糖分を摂るなんて、お腹が痛くなるし気分が悪くなるよ。苦しいのはイイけど、運動の邪魔になるようなことはしないさ。持って行ったのは数個だし、一つも盗み食いはしてないよ」
「僕からいいかな? アステロペーは運動が好きすぎるんだ。本人が言ってる通り、運動の邪魔になるようなことは絶対しないよ」
【確定】アステロペーは果物を持って走りに行った。まだ果物は残っていた。
二人の証言で状況が鮮明になってきた結果、全員の注目が最後のアイリカーに集まった。
こいつも果物を取ったんだろうな、という眼差しに晒されて、大きな身体で小刻みに震えていたアイリカーは緊張のあまり吐いた。
「おえぇぇぇ……」
少しして、落ち着いたアイリカーはリパラーに付き添われながら話始めた。
「ぁ、あの、ボクはその……あばばば……」
「落ち着いて、アイリカー」
「あのその……り、リパラーの手伝いをいつもやってるからお昼ご飯の後も手伝おうと思って厨房に行ったらまだ果物が残ってて痛んじゃうから保存しようと思って魔法の準備をしてたらその間にヘスペラがやってきて森の動物にあげるって持っていきましたぁ……」
アイリカーは勢いに任せて一息に早口で言い切った。最後の方は息が続かず声がカスカスだった。酸素不足で顔色がさらに悪くなっている。リパラーが背中をさすって落ち着かせている。
持ち前の機能で正確にアイリカーの早口証言を聞き取っていたラドンは、ヘスペリデスにヘスペラについて尋ねる。
「ヘスペラが最後の犯人だ。先刻も名前が出てきたが、どういう姉妹なんだ?」
「ヘスペラかぁ……」
ヘスペリデスは一様にヘスペラについて口ごもる。あれほど騒いでいたヘスペレトゥーラですら、「仕方ないかも」と言っている。
これまでとは彼女達の違う対応に、ラドンは訝しむ。
「何だ。ヘスペラについてどうして言い淀む?」
「あたしが説明するよ」
エリュテイアが前に出た。
「ヘスペラは夕方の力を持つへスペリデス。姉妹の中で一番自由な子で歌が上手いの」
「だから、それがどうしたと言うのだ」
「せっかちだね、ちゃんと説明するよ。ただ、本人が来るのを待ってくれないか。もう帰ってくる時間だし」
「何故だ?」
「ここでの仕事に関わる話だからさ。女神ヘラの言いつけで、部外者に仕事の話をするときは姉妹の全会一致が必要なんだ」
女神ヘラ。ここヘスペリデスの園の管理者にして、黄金果実の持ち主。最高神ゼウスの妻でもあり、女神のトップとも言える存在。
その女神の言いつけとは、もはや不文律の掟に等しい。破れば神罰だ。
ここで食い下がっても仕方がないと、ラドンは渋々エリュテイアの提案を受け入れた。
エリュテイアは、クリュソテミスとアイリカーにヘスペラを連れてくる指示を出した。
―――――――
一旦、部屋に戻って汗を拭い服を着替えたヘスペラが食堂に戻ってきた。
髪を後ろでまとめたヘスペラはリパラーが用意したヒュギエイアのオレンジ水を受け取る。
「ありがと。散々歌ったから喉が痛いよ」
「はちみつも入れておいたから」
「流石リパラー。ヒュギエイアも、美味しいよコレ」
「当然です。それでヘスペラ、事の仔細はクリュソテミスとアイリカーに聞いていますか?」
「うん。自分のお勤め中にそんなことになってるなんて知らなかった。ヘスペレトゥーサ」
「何~?」
「ごめん。私が最後に果物を持って行ったんだ。森の動物たちにあげちゃって残ってない。当分は私のデザートをあげるね」
【確定】ヘスペラが最後の犯人。
「いいよ~そういうことなら仕方ないもん~」
「ありがと。それでエリュテイア」
「何?」
「あそこに居る蛇が仲裁役?」
「そう。ラドンよ」
ヘスペラはラドンの所にやってきて、その顔をじっと見る。
「お前がヘスペラ、最後のヘスペリデスか」
「そう。ごめん、私のせいで手間をかけちゃったし、お勤めだったから待たせちゃった」
「……」
ラドンは何も答えず、そっぽを向く。
ヘスペラもじっと頭を下げ続ける。
「……。仕事はまだ終わっていない」
「?」
ラドンの言葉に、ヘスペラは頭をあげた。
エリュテイアが首を傾げる。
「どういうこと?」
「言った筈だ。我は犯人捜しも失せ物探しも専門外、状況を整理して仲裁することが仕事だと。だから、整理するのだ」
ラドンは蜷局を巻き、身体を大きく見せる。
「仕事を仕上げる時だ。全員、静聴せよ」
ラドンが状況の解説を始めた。
「まず事の発端は昼飯過ぎ。リパラーは姉妹のためにデザートを作ろうと果物を用意していた。しかし、昼過ぎには出かけねばならず、厨房には鍵をかけて出ていくことになる。錠はリパラーの持つ鍵でしか開かない。
よって、事件はリパラーが出かける昼過ぎまでに起こった。
果物を取った犯人は三人居た。
日光浴に持っていくオレンジ水を作ったヒュギエイア。運動中の補給として持って行ったアステロペー。森の動物にあげようと持って行ったヘスペラ。これら三人の手によって果物は無くなった。
ここで更に、事態はこじれることになる。
ヘスペレトゥーサが厨房にあった果物を『リパラーが自分のために用意した物』だと思い込み、それが無くなっていることに気付いて騒ぎ出した。
その騒ぎ様は凄まじく、他の姉妹が事態を冷静に分析して判断する余地もないほどだった。アイリカーは恐らく最も真実に近い情報を持っていたが、その性格故に混乱する状況ではまともに証言できなかった。クリュソテミスも姉妹をまとめようと努力したが、短気な性分のせいで更に事態を悪化させることになった。
……今回の件、我の判断で最も状況をかき乱した事由を挙げるなら、ヘスペレトゥーサの勘違いが原因だったと指摘する。だが、悪化させた原因はヘスペリデス姉妹の繋がりが強すぎることにある。
貴様らは互いに対して理解がありすぎる。そのせいでクリュソテミスはヘスペレトゥーサの証言を信じずに自分で食べたと決めつけた。アイリカーが喋れなくても仕方がないと甘やかした。ヘスペラが仕事中だからと、事態の解決に参加させなかった。
他の姉妹にも悪しき所がある。アイグレーとリパラーは甘すぎ、エリュテイアは冷たすぎ、アレトゥーサは関心がなさすぎる、アステロペーとヒュギエイアは身勝手すぎる。
私情を交えて評定を下してやろう。
――唾棄すべき絆の強さが、偶然の重なりを悪化させてお前たちの絆を壊しかけた」
これにてヘスペリデスの園で起こった揉め事は落着した。
ラドンの出した結論に、ヘスペリデスは返す言葉もなかった。
たった一人を除いて。
「待って。確かにアナタの言う通りだと思う。けど、私の姉妹を、絆が強いことを馬鹿にしたのは許さない」
「兄弟姉妹は争い、憎しみ合うものだ。別々の個体が相争うことでより強力な個体に進化する。それが繋がる利点だ。貴様らのように慣れあうのは弱い関係だ」
「違う。黄金果実の管理は一人で出来るものじゃない。姉妹の協力があるからこそよ。助け合い、信頼し合う関係は強いの。アナタの言う残酷な関係は兄弟や姉妹の在り方じゃない」
一歩も譲らないヘスペラ。父であるアトラスに似て、岩のような意志が宿っている。
残酷な関係。
ラドンはそう感じたことがない。
ヘスペリデスや女神たちのような関係こそを、兄弟姉妹のそれだと言うのなら。その表現は的確だろう。
『何故、我らは兄弟姉妹なのだ?』
ヘスペラの剣幕に、忘れていた疑問がまた浮かぶ。
剣呑なラドンとヘスペラの間に、エリュテイアとクリュソテミスが割って入る。
「そこまで! ヘスペラ、ラドンの口が悪いのは今は流して。恩は返さなきゃ」
「そうだ。こいつにはここの仕事を教えようって話になってるんだ」
姉妹二人の制止に、ヘスペラは口をつぐんだ。
「ラドンもそれでいいよね」
「……ああ」
「じゃあ、ちょっと待ってて。すぐに意見をとるから」
ヘスペリデスの会議が始まった。
ヘスペラ以外のヘスペリデスはラドンに好印象を持っていた。ヘスペラも姉妹が言うならとラドンを受け入れた。
全会一致がなされてラドンにヘスペリデスの仕事について語ろうとしたとき、女神ヘラの伝達が届いた。
「え!?」
「何だと……?」
女神ヘラの指令により、ラドンはヘスペリデスの園で黄金果実の護衛をする役目を授かった。
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