第2話
やっぱりサリバン先生はすごいわ!
いつもは散々文句を言って、大泣きしてもドレスは姉に取られてわたくしは夜会に貧相なドレスしか着ていけない。姉は、知らん顔してふたりで仕立てたのにって言うのよね。だけど、今日の夜会はドレスは取られたがきちんと見栄えのある姉のドレスを着ている。ま、これも元々わたくしの予算で購入したものなんだけどね。一度も袖を通していないから、新品同然だ。
「シャーリー、夜会に行くわよ」
お姉様が呼びに来た。いつもならここで貧相なドレスを馬鹿にするんだけど……。
「お姉様! なんて素敵なの! お姉様のドレスは最高ね! いや、お姉様自身が輝いているんだわ! やっぱりお姉様にはピンクが似合うわ! 素敵!」
先生の教え、その3。自分に攻撃が来そうなときは、先手を取れ。相手に時間がない時ほど、褒め殺しは効果的だ。褒めまくれば、相手はいい気分になる。そこですかさず時間のない事を主張せよ。
「そ、そう? シャーリーも素敵よ」
「これもお姉様がドレスを貸してくれたおかげですわ! あら、お姉様もう時間がないわ。急いで馬車に行きましょう!」
いつもの姉なら、わたくしのドレス姿を見ていちゃもんをつけて、着替えさせてる。今回はわたくしは、姉の引き立て役になるつもりはないから、しっかり褒めないと。
褒められて気分が良くなっているところに時間がないと畳みかければ姉の意識はそちらに行く。馬車に乗り込み、会場に着くまで延々と姉を褒め続けた。
「それじゃあね、シャーリー。わたくしは婚約者と過ごすわ。貴方はいつものように……」
「お姉様! 婚約者のケイリー様がお待ちですわ! ささ、美しいお姉様を見ていただきましょう!」
「やぁ、アイリーン今日も美しいね。シャーリーも、今日はいつもと違って素敵だよ」
わたくしを褒めなくていいですわよ。ケイリー様! せっかく姉を放牧しようとしたのにこっちに敵意向けられたじゃないですか!
……でも、ピンチはチャンスよね。
「ケイリー様、ごきげんよう。このドレスは、姉が貸してくれたものなんですの。ですから、姉のセンスがいいのですわ」
「そうか、アイリーンは優しいね。妹にドレスを貸してあげるなんて。伯爵家は、シャーリーの衣装まで手が回らないのかい? アイリーンのドレスは、僕がプレゼントしようか?」
先生の教え、その4。相手を褒めるふりをして、気になる情報を流せ。
ケイリー様は我が家に婿入りする予定の伯爵家次男。うちの台所事情は気になりますよね。お姉様を気遣ってるのはホントかもしれないけど、貴族だもの。それだけじゃないわよね。
「ち、違うのケイリー! いつもシャーリーの衣装は野暮ったいでしょ? だから、今日はわたくしのドレスを貸してあげたの!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます