第20.5話 悪口ダメ絶対
これは高田リサイタルが起きる2時間前の話。
サクラはハルトとカラオケの部屋が一緒じゃないことで不機嫌だった。
『君がいなくなった日々も、どうしようもない気だるさも』
どうせカラオケに来るなら、ハルと来たかった。
ほとんど会話したことがない奴、それに加えてアタシを怖がってる奴らとカラオケだなんて……
「高田さんも歌お!」
「アタシはいい」
アタシは両親とカラオケに行った時、二度と歌うなと約束させられたほどの音痴だ。少し言い過ぎだと思うけど……まぁアタシを悪く思ってる奴らに下手だと思われるのは癪だ。
どうせ仲良くなるつもりもないし、今度ハルと来た時にでも歌えばいいや。
「やっぱり高田さんってさ……佐々木? と付き合ってるの?」
「……まぁ」
クラスメイトの女子から質問されたけど、アタシは即答できなかった。
ハルは照れ屋だからあまり大々的に言うのも気が引ける。でもクラスメイトにはバレていたんだ。
それならもう少し自慢してもいいのかな?
「えー! マジもったいないじゃん」
「え?」
もったいない?
確かにアタシからすればハルはもったいない程カッコいいけど、それ言うなんて……嫌な女。
「美人な高田さんが、あんな陰キャと付き合うってかなりもったいないよ!!」
「……あ?」
「サキ、失礼だよ」
「でも思わない? なんか釣り合いとれてないって言うか。佐々木ってなんかアニメの女の子見てニヤニヤしてそう」
「ぷっ」
どこに行ってもそうだ。
人の事を決めつけて、勝手に話を進めようとする。ハルがこの人達に何かしたのだろうか?
アタシが見る限りアタシ以外に絡んでいる所は見たことは……まさか!
「いやまぁそうだけど〜」
「でしょ?」
アタシがハルを独占しているからこの人達はハルの悪口を言って別れさせようとしている?!
「うるさい」
「「……え?」」
そんな手に引っかかるものか!
「あっ……えーと、これ冗談だよ? 本気で捉えるものじゃないからね?」
「そ、そうそう。こーいうのは会話の定型分的な? 人をいじるみたいな」
「だからって人を貶す事を言っていいの?」
「はぁ?!」
アタシの言葉に頭に来たのか、サキと言う女はアタシを睨みつける。
「いや別に貶してないし。アニメ見てそうって言っただけだよ? それだけで悪口言ってるって思う高田さんの方が佐々木を馬鹿にしてるんじゃない?」
「ちょっと二人とも落ち着いて……」
もう一人が場を鎮めようとするが、アタシは構わず言う。
「さっきの言い方が悪意があったから聞いただけよ。それとも本人がいないところでその人を笑うのはアナタにとっては良いことなの?」
「あのねぇ〜」
この人達にハルは譲らない。
いくら好きだからって、悪口を言うクソ女には絶対に。
「……あ! ほ、他のグループがボウリング行こうって言ってるから、そろそろカラオケはお開きにしない?」
するとこの空気感を察したかのようなタイミングで、カラオケの終わりが告げられる。
「い、いいねぇ〜」
「行こ行こ! サキもほら」
「……うん」
サキと言う女は納得しない顔をしながらも、他の人に言われるがままカラオケから出る。その後でアタシもカラオケから出る事にした。
もちろんアタシボウリングに行く気などない。
……ハルが行くなら話は別だけど。
でもハルの悪口を言うクソ女がいる、それを怒ろうともしない人達と遊びたいとは思えない。ハルが行くならアタシがハルを守らないと。
こうしてサクラはクラスメイトとの仲に溝ができ、カラオケを後にし、ハルトと再びカラオケに戻るのだった。
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