第11話 美少女クッキングバトル!! 開幕前
前回のあらすじ
同級生、相葉撫子と再会した高田さんはかつての因縁もあり、殴り合い寸前になる。そこに現れた相葉さんの執事、黒井海晴が料理対決を提案し、僕こと佐々木晴斗は、強引に審査員として参加させられるのだった。
※※※
『さぁ始まりました!!! 美少女クッキングバトル!!』
「「「「イェーイ!!!」」」」
黒井さんがマイクを通して叫ぶと、観客席は大いに盛り上がる。
『え~今回司会進行を務めさせていただく黒井です! 気軽にクロちゃんと呼んでください!』
「クロちゃーん!!」
『クロちゃんです! アワワワー』
ドッ!! と、黒井さんのボケで、会場は笑いに包まれる。
イケメンなだけじゃなく、口も達者なのかぁ……
ひとしきり会場を盛り上げた黒井さんは、僕がいる会場の裏へと戻る。
「ふぅ。盛り上げるのも疲れますね」
「これは一体どういうことですか?」
「何って……クッキングバトルですよ。話聞いてました?」
「いや聞いているのはこの会場とお客さんですよ! なんすかこの大掛かりなイベントは?!」
僕たちはさっきまでいた場所から移動し、現在相葉財閥が近所の公園を買収し作ったライブ会場に来ていた。
会場を組み立てるのにかかった時間、およそ三十分。
世界的に名の知れた建築家なども参加し、ライブ会場と言うにはかなり豪華な代物になっている。
「お嬢様はあれでも相葉財閥社長のご息女。こういう機会は是非名を知ってもらわなければならないのです」
言われてみると、会場の客の中にはちらほら見たことのある著名人が……あっ!
あの人大御所のお笑い芸人じゃないか?! 後でサイン貰いにいこう!!!
「……それにしてはふざけ過ぎじゃないですか?」
「全力でやっているんです。私は相葉財閥に代々仕えてきた執事です。生半可なことをしてお嬢様や相葉の名を汚すわけにはいかないので」
仕事を完璧にこなすプロフェッショナルか。
少し尊敬するなぁ。
「おいまだかよ!」
「早くしろー」
「おっと、オーディエンスがお待ちかねです。舞台に戻りますね」
「あ、はい」
そして黒井さんはマイクを片手に、舞台へと上がる。
『それではみなさぁぁん!! お待たせいたしますぅた!! 今からお待ちかねの~? 今回の主役が登場だぁぁぁぁ!!!』
「「「「イェーイ!!!」」」」
やっぱりふざけてるだろ!!
プシューっと舞台の中央から左よりの場所から白い煙が出ると、中から高田さんがレストランで働くシェフのような格好で現れる。
「なによこの格好……」
『破壊の申し子であり、バーサーカーの異名をも持つ過激な少女!! 美しい花には棘がある……高田桜様ぁぁぁ!!!」
「「「「うぉぉぉぉ!!!」」」」
「変な語りやめなさいよ!!」
高田さんの言葉に耳を貸さず、高田さんが立つ舞台の右から再び白い煙が出る。
『続いて!! あの相葉財閥ご息女であり、イギリス人、金持ち、関西弁、一人称『ウチ』と、盛に盛りまくった渋滞キャラ!! 我が主、相葉撫子様ぁぁぁ!!!』
「「「「ふぉぉぉぉ!!!」」」」
「なんかサクラと違くない?!」
『ちなみにある人からの証言によると、『こいつがでてからフォローが減ったし、出さなきゃよかった』と、苦情が入っている模様です!!!』
「フォローってなんやねん!! 意味分からんけどウチのせいにすんなや!!!」
これで今回のメインである二人が登場したのか。
『続いては、今回お二人の料理を審査する、審査員の方々の紹介です!!!』
「佐々木様、舞台に用意した特設椅子に向かってください」
「え? いや、ちょっと!!」
僕はスタッフに半場強引に舞台へと上がらされると、黒井さんが言葉を続ける。
『何をやってもぱっとしない、いるかいらないかで言うと正直いらない存在!!! 名は……何でしたっけ?』
「酷い!!!」
分かった。やっぱりこいつふざけてやがる!!!
『冗談ですよ佐々木様。今回のクッキングバトル、どういったお気持ちで?』
「帰りたいです」
『なるほど。食べたくて待ちきれない様子です!』
「いや帰りたいです」
『安心してください! 料理は逃げませんから!!』
「帰りたいですって!!!」
『ちゃんと公平に審査してくださいよ?』
「いやだから」
『続いて!!!』
「話きけよぉぉぉ!!!」
そして僕の隣にシェフ姿の厳格そうな老人が椅子に座る。
『皆さんもご存じ!! ミシュラン五つ星を獲得したフランス料理店のオーナーである、アホメ・チャクチャ先生!!!』
「「「「ふぉぉぉ!!!」」」」
「フッ、わしの舌を満足させれるかな?」
なんか料理漫画にでそうなキャラだな。
出る作品間違えてるだろ。
『最後の一人は、我が相葉財閥が飼う馬であり、前回は一度も出番がなかったお嬢様の愛馬!! レオナルド!!!』
「ヒヒーン」
「待ってください!! なんで馬が審査員なんですか?!」
『レオナルドは神の舌を持つ素晴らしい馬です。これ以上の適任はいないですよ』
神の舌って何?
これラブコメだよね?! なんでラブコメからラブ抜いて料理コメディーになろうとしてるの?!
「「「「キャー!!!」」」
「レオナルドー!!!」
しかも予想以上の盛り上がり方してるぅぅぅ!?
馬であるレオナルドの登場が今までで一番の盛り上がりになるなんて……たかが女子高生の料理対決でこんなに会場が盛り上がるのはおかしくないか?
それに声も観客席からじゃなく、後ろから聞こえ……
『ふぉぉぉぉ!!!』
「おい! もう十分やったし止めろ!」
「了解っす」
スタッフが音声流してたんかい!!!
『審査委員の紹介もひと段落しましたので、ここからはルール説明に入ります』
そして舞台に設置されたスクリーンに、文字が映しだされる。
『ルールは簡単!! いかに美味しい料理を作り、審査員の舌を満足させられるか! 三人の審査員がお二人のどちらかに票をいれ、優劣を付けさせて頂きます! なお、食材に関しましてはあらゆることに備え相葉財閥が世界中の選りすぐりの食材を用意させて頂いてます』
舞台にバス並みの大きさである巨大な冷蔵庫が用意され、高田さんと相葉さんはそれぞれキッチンに立つ。
『お二人の心境を聞いてみたいと思います! まずは高田様から!」
高田さんは少し困惑しながらも、口を開く。
「なんでこんなことになったのかは分からないけど……やるからにはハルに美味しいって言ってもらえる最高の料理を作るわ」
『そうですか!! これは佐々木様もさぞかし嬉しそうだと思いましたが、予想以上に嫌な顔をしておらっしゃる!! これは期待できなさそうだ!!!』
「なんでよ!!!」
高田さんの料理……あの破壊神が作る料理に期待できることと言えば、返り血で作った人間ミキサーしか思い浮かばない。
『続いてはお嬢様の心境を…』
「男に目を向けられるのも今の内や!! 圧倒的な美味さの料理をつ」
『大体分かるので結構です。それでは美少女クッキングバトル、開幕です!!』
「黒井ぃぃぃ!!!」
次回、いよいよバトルが始まる!!!
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