第8.5話 番長、恋に落ちる
これは不良グループが高田桜一人に壊滅された後のある日。
鬼瓦はここ一週間、謎の病に罹っていた。
「くそっ! 何なんだ!!!」
鬼瓦は今まで感じたことがない感情に戸惑いを隠せなかった。
「お前本当に大丈夫か? やっぱりまだ高田に負けたこと気にしてるのか?」
吉良はここ最近調子の悪そうにしている鬼瓦を心配する。
「そんなに苦しいなら、もっかい高田に挑むか?」
「いや、この痛みはもっと違うものだ……」
鬼瓦は否定する。
だが、彼は心のどこかでは分かっているはずなのだ。
心を苦しめている原因を。
「じゃあ普通に病気か? でもお前って生まれてこの方一度も風邪をひいたことないだろ?」
「ああ。それも違う。なんかこう心が締め付けられるような……」
「……そいつのことが頭から離れない苦しみか?」
「そ、そうだ! でも…なんで分かった?!」
吉良はため息をつき、そして鈍感な鬼瓦に答えを教える。
「そりゃああれだ。恋の病だ」
「なっ?!」
鬼瓦には信じられない言葉だった。
「喧嘩しかしてこなかったオレに、こ、恋だと?! あり得ない!!」
鬼瓦は激しく怒るが、吉良はそれを冷静に答える。
「じゃあ一回そいつのことを自分の恋人だと仮定してみろ」
「あ? そんなことして何の効果が……」
「いいからやってみろ」
鬼瓦は吉良の言う通り、頭の中でいっぱいの奴を恋人として考える。
するとどうだろう。
鬼瓦は晴れやかな、心地よい感情に包まれる感覚が体中に伝わる。
「さっきまでの苦しい感じが…なくなった」
「ふっ。じゃあお前はそいつの事が好きな証拠だ」
そうか…これが恋……と、鬼瓦は理解するが、それと同時に、かなわぬ恋だと分かる。
「オレには無理だ…あいつにはもう相手が……」
「おいおい何を言っているんだよ! これが天下の鬼瓦だとは聞いて呆れるね!」
「!」
吉良にとって鬼瓦は崇拝するに等しい感情を持っていた。
高田に殴られた時や馬鹿にされた時、崇拝するものが弱音を吐く姿など見たくないのだ。
「お前はどんなことにも勝つ、貪欲さが強みだろ? 鼻から勝負しないでダサい姿を見せんなよ!!」
「吉良……」
その言葉に鬼瓦は心打たれ、決意する。
「……分かった。オレはあいつを手に入れる」
「それでこそお前だ」
二人は熱い握手を交わし、より友情が深まる。
「まぁ俺もサポートしてやっから、どーんと構えとけ!!」
「ああ!」
鬼瓦は高田に二度負けた。
しかし、彼は勝つ以上の素晴らしい経験を獲得した。
真の友情、そして恋と言う名の感情を!!!
「お前はルックスいいんだから壁ドンでもすりゃあイチコロよ!」
「そんなもんか?」
「そうそう」
「でも……佐々木に壁ドンなんて、ちょっと照れるな」
「馬鹿! そこをなんとかすんのが……今なんつった?」
吉良は思いがけない言葉を聞き、思わず確認する。
「照れるなって言った」
「そこじゃない。……お前が好きなのって高田桜だよな?」
吉良は一瞬耳を疑うも、自分の勘違いだろうと思い、再度確認する。
聞き間違いであって欲しい、いや、そうであれ! と強く願いながら。
「……何言ってんだよ? 頭おかしくなったのか?」
この答え方は当たり前のことを聞くなよということだろう!
「だ、だよな!! いや~俺も一瞬焦ったよ!」
そうに決まっていると、吉良は決めつけることにしt
「佐々木に……決まってるだろ」
「うええぇぇぇええぇぇぇえぇ?!?!」
……ちなみに、
「くそぉぉぉ!!!」
「俺は…俺は何て勿体ないことを!!!」
「あの時残っていれば、高田様の愛の鞭をもらえたのに!!!」
「あのゴミを見る目……ああ!!!」
不良グループは高田桜に怯えすぎて、
「「「高田さまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
全員、Мに目覚めた。
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