Novelber day 18 『微睡み』
夢という無意識の混沌。目覚めという明瞭な現実への扉。その狭間の微睡みでしか、見ることの出来ない人がいた。
形としては、私は目覚めている。上半身を寝台から起こし、ぼやけた目で「彼女」を見る。
「おはよう」
いつもと同じ間取りの、見慣れた寝室。その端に、見知らぬ異物――あの女が立っている。それでも虚ろな微睡みの中で、私は彼女を「知っていた」。
彼女は微笑み、私の方へと近づいてくる。そして、口元を小さく動かし、何か言いかけながら手を伸ばして――消える。私の意識もまた、微睡みから醒める。
次に目覚めるのは、本当の私の部屋。いつもと同じ間取りの、見慣れた寝室――ただ、彼女がいないだけの。
この空白は何だろう。顔も声ももう思い出せない女を思う。いっそ、気味の悪い悪夢として切り捨てられればよかったのに。それか、次はあの手を掴んでしまおうか。どこへ行くとも知れぬ手を。
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