Novelber day 16 『無月』
ふと空を見上げると、暗く曇っていて何も見えませんでした。星一つ、月一つありません。普段、好んで空を見上げる訳ではありません。ただ今日だけは、大きな、明るい月が出ていて欲しかったのです。
「じゃあ、またね」
繋いでいた手が不意に離れました。私もぎこちなく笑って、またね、と手を振ります。終電の駅です。また、なんて無いことを知っています。だから今日だけは、大きな円い月が見たかったのに。
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