Novelber day 15 『オルゴール』

 博物館の片隅に、オルゴールが置かれていた。とある貴族の館から寄贈されたものだという。滑らかな小箱の形をしている。ご自由に、と書かれた螺子を回したら、中から音色と、人形が弾けた。

 陶器の人形は両手を広げて、箱の中でくるくると踊る。オルゴールの音色が、百年の時を経ても外れのない旋律で、それに重なる。透き通る白い肌、硝子の目。ターンした瞬間、その人形がフッと微笑んだ気がして――あ、と手を伸ばそうとした瞬間、箱が閉まった。音色も止んだ。

 後はただ、人気のない博物館に佇む、私一人が取り残された。

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