Novelber day 12 『ふわふわ』

 ふわふわのペットを飼い始めた。それはとても小さくて、白くて、掌の上に乗せるとまるで綿毛のようだ。戯れに、ふぅっと息を吹きかけてみる。その「仔」は、ふるふると体を震わせながらも、私の掌に一生懸命に掴まって、飛ばされないよう堪えている。こんなかわいい仔に意地悪をしようとしてしまった自分が恥ずかしくなり、小声で「ごめんね」と謝る。

 今日もいい天気だ。この仔にも、たっぷり日光浴をさせられる。掌の上から下ろすと、その仔は小さな足でよちよちと歩きながら、日当たりの良い窓辺に置かれたピン・クッションの上に腰を下ろした。

「誰かに見られないようにね」

 そう、小さく声を掛ける。そう。この仔を飼うには、条件があった。

 一つ。誰にも見られてはいけない。二つ。誰にも飼育の事実を知られてはいけない。三つ。【名前】を呼んではいけない。

 どれか一つでも条件を破ってしまったら、その時、私は――。

 フフ。でも、きっと大丈夫。

 だってこんなに、ふわふわで愛らしくて、か弱いんだもの。

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