Novelber day 3 『落葉』

 ざくざく、ざくざく。落葉を踏んで歩く。

 赤、黄、あるいは茶焦げた色をした、鮮やかな秋の絨毯。ついこの間までは夏の陽射しの下で腕を広げて、緑の光を放っていたそれらは、今ではすっかりくたびれてしまった。

「まるで山火事のようね」

 先を行く娘が、物騒なことを言う。僕が苦笑していると、彼女は落葉を一枚拾って、また宙に放り投げた。

「火の季節の後、灰が降るのね」

 灰、の連想がうまくいかなかったけれど、やがて雪のことだと気付く。

 彼女の中の詩的世界に、僕はもう入り込めないけれど。屈まないと同じ視点に立てないし、その度に腰が悲鳴を上げるけれど。

 こうした言葉の一つ一つを覚え続けることだけは、僕にもまだできるのかもしれない。

 並んで落葉を踏み歩く、彼女にとっての長い人生の、ほんの端っこで。

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