第7話 莉子さァァン
「お前、部活入ったんだってな」
「来栖、うん、そうだよ、なんで知ってるの?」
朝の授業が始まる前の休み時間、机に突っ伏している七条に話しかける。
このことを知ったのはもちろん昨日帰ったと見せかけて七条が教室から出た瞬間漫研のチラシを顔にぶつけ、興味を持った七条が漫研に行くのをつけていたからである。
だがその場でその部活に入るとさすがに怪しまれるため一日置くことにしたのだ。
「うーん?お前、漫研のチラシ持ってただろ、それで知ったんだ」
「(持ってたっけ?)まぁ、そうだね、僕は昨日漫研に入ったんだ、そして今日入部届けを持っていくつもり」
入部届けをヒラヒラと俺に見せて言った。
それと同時に俺も漫研と書かれている入部届けを七条に見せた。
「奇遇だな、俺も漫研に入ろうと思ってたんだ」
「そうなんだ、まぁ楽だしいいよね」
「?、そんなのは入ってみないと分からんだろう、何言ってるんだ」
「え、サボりたいから漫研に入ったんじゃないの?」
「な訳がないだろう、勿体ない」
「もったいない?」
「あぁ、一度しかない学校生活、楽しまなきゃ損だ、サボるなんてもってのほか」
「じゃあなんで、漫研に⋯⋯」
「いやそれは⋯⋯」
まずいな、お前と一緒の部活に入ればなんか主人公っぽいストーリーがあるかなーなんていう浅い理由を話すのは流石に恥ずかしいし⋯⋯
「漫画が好きだからだ」
ここは無難に行こう
「⋯⋯そ」
すると七条はぷいっと外の景色を見た。そんな時ドンッと机の横を叩く音がした。
見上げるとそこには麗しい白髪の美女莉子さんが立っていた。その音に七条はびっくりしたのか肩を震わせながら恐る恐る莉子さんの方を見る。
「莉子さん!」
「七条くん、漫研に入るんですか!?」
俺のその声は莉子さんの中で無かったことにされた。
「え、うん」
「そうなんだ!じゃあ私もそこに入りますね!」
「莉子さーん!」
「えー、どうして?」
「だって漫研ってなんか面白そうじゃないですか?」
「莉子莉子さーん!」
「まぁ僕が止める権利は無いけど⋯⋯」
「よし!やっと部活が決まった、まだ転校してきたばっかりだったから体験入部期間中だったんですよ、けど他の部活はなんか違う気がして、ようやくしっくりきそうな部活が見つかって良かったです」
「そ、そう、それは良かったね、じゃあ今日の放課後一緒に行く?」
「はい!」
「莉子さーん俺もいますよー」
「じゃあまた放課後!」
「ん」
俺の莉子さんへの呼びかけが全て無視されたあと、莉子さんはまるで何事もなかったかのようにその場を去っていった。
傷ついた、流石に
「おい七条、俺負けねぇから」
「えー、だから何に」
「いつか、いつか絶対に勝ってやるからなーー!」
俺は七条に背を向けて全力で教科書が入っているロッカーまで走った、走った、走って、教卓に足をぶつけて転んだ。しかも結構派手に。
「あ、痛ァァァァ!」
顎を思いっきり地面にぶつけた。それはもう割れるくらい痛かった。
「ぷっ、お前何してんの、馬鹿なの?」
そんな醜態をよりにもよってあの相良に見られてしまった、相良が爆笑しながら近づいてくる。
「おいこらモブの相良、ぶち殺されたくなければその携帯を下げるがいい」
「やだね、俺のホーム画面にしてやるよ、来栖死すって言う文字付きでな」
「消しやがれこらぁ!!」
わちゃわちゃ、わちゃわちゃ、と相良とじゃれているとコツンと頭に平たい感触が走った。
「お前ら席座ろうな?」
「「うす」」
しょんぼりとした雰囲気をまとったまま俺と相良は席に戻っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます