第34話 女子高生すげえ

「おせーよジュリ」

「ごめ~ん、色々お店見て回ってたら遅くなっちゃった~、座ってもいい?」

 ジュリさんはシュウゾウの隣りに、友達は「よろしくねー」とオレの隣に腰掛けた。

 二人ともすっげーギャルだった、しかも落ち着いた感じの大人っぽいギャルで胸もすげーでかくていい匂いがした。

 ジュリさんは中学の時に見た時とは別人のように美人でお洒落になっていた。

 中学生と高校生ではこんなにも変わるんだとびっくりした。


 オレはとまどいながらもとりあえず「こんばんわ」と挨拶した。

 するとギャルたちは「こんばんわ~、なんかウケるー」と何か知らないけど爆笑していた。


「みぃたんに紹介するね、まずこちらが私の彼ピのシュウゾウで~、こっちがシュウゾウの友達のたつはるくん? だよね?」

 ジュリさんがでっかい瞳でアイコンタクトを取ってきたのでオレはウンと頷いた。

「で、この子が私の親友のみぃた~ん」

 みぃたんが「みぃたんで~す、よろしくぅー」というのでさっきも言った気がしたけどオレも「よろしく」と言いかえした。


「え~いいね~中学生の彼ピ~、なんか年下もかわいくて良いいかもと思った~」

「でしょ~、彼もなかなかいいんじゃない? たつはるくん」

「うん、クソカッコいい、来る前は全然期待してなかったんだけどすっごくアガってきた」

 キャハハハと笑うギャルたち、シュウゾウは呆れていた。

「ねえお腹空いてない? 何か注文しよう~」


 ジュリさんとみぃたんさんはすごく明るくて勝手に2人で盛り上がるしコミュ力も半端なくてスキンシップもグイグイしてくるし女子高生スゲーと思った。話もどんどん振ってくれるので自分で話題を考えなくても良いぶん楽と言えば楽だった、あいかわらず緊張はしっぱなしだけど。


 食事の後はゲーセンでプリクラをとったりいろんなゲームをして遊んだ。その後にイルミネーションを見に行って、周りがカップルだらけだったのでみぃたんさんが「私たちもカップルの振りしよう?」と腕を絡めて密着してきた。

 みぃたんさんのでかい胸がおもいきり腕にあたっているんだが、こういうのって普通は喜ぶところなんだろうけどオレは緊張と心配の方が大きくてそれどころじゃなかった。

 会ったばかりのまだ良く知らないオレに胸が当たってますけど良いのですかと。大丈夫なんですかと。あとで怖い元彼が出てきたり高額の請求とか届いたりしませんよねとか考えてイルミネーションどころじゃなかった。

 


 一通り見て回って時刻は21時前になっていたけど女子達がまだ遊びたいというのでジュリさんの提案でカラオケに行く事になった。

 オレは歌は大好きだがヘタクソだ、これまで人前で歌った事はほぼない、シュウゾウ達とカラオケに行く事もあるけどいつも盛り上げ役に徹していて自分が歌う事はない、女子の前で歌う事になったらイメージダウンは避けられない、カラオケは断ろう。


「あの、もう時間も遅いし、なんか疲れたからオレは先に帰るね」

「まじか立春」

「えーなんでー、うそでしょー? もっと遊ぼう~?」

「タッツー今日はクリスマスイブだよ~? しかも明日から冬休みじゃん、もっと楽しもうよー」

「そうだよ、タッツ~がいなくなったら私だけひとりになっちゃうじゃん、一緒にカラオケ行こう~?」

「タッツー行こう~? お願~い」


「タッツゥ~お願~い」

 シュウゾウまで女達の喋り方を真似をしてお願いしてきた。


「わかった……」

「よっしゃ」

「やったぁ~」

「ありがと~タッツゥ~」


         ◎


 カラオケ屋さんに来てしまった。

 クリスマスイブだからなのかほぼ満室だ。


 個室に入るとシュウゾウがメニューを広げてみんなが欲しいものをきいていた。

 オレは水だけで良かったからソファーにずっしり腰掛けて女子達があれもいいこれも美味しそうとメニューを指さして迷っているのぼーっと見ながら、何とかして歌わないで済む方法はないだろうかと頭をフル回転させていた、そしたらジュリさんと目が合って、オレが暇していると思ったのか「タッツーから先に歌っていいよ」とリモコンとマイクを差し出してきた。


「あぁ……オレ歌うの苦手だから…‥、ジュリさんが歌って」

「え~なんで~、タッツ~がうたって~」

「でもオレすっげーヘタクソだから……」

「そういえば立春が歌っているところ一度も見たことないな」

「オレは聞き専だから、いつも盛り上げ役に徹してるし……」

「え~下手でも良いよ~、タッツーの歌聴きた~い」

「私もタッツ~の歌ききた~い」

「うたって~?」

「おねが~い」



 オレはリモコンとマイクを受け取った。

 こうなったら歌うしかねえ。


 でも何を歌えばいいんだ。


 ランキングの所をみたり色々なジャンルで検索したがなかなかいい感じの曲が見つからなかった。

 そうしているうちにジュリさんたちの注文も決まってシュウゾウは店員に電話をしはじめた。

 

 やべえ、あまり曲選びに時間かけるのもよくない、早く決めないと。


 適当に開いたページにこれならオレでもギリギリ歌えるんじゃないかと言う曲名があったのでもうこれでいいやとドキドキしながら番号を入力した。


 ソファから立ち上がり画面に向いて足を肩幅に開いた。

 背筋を伸ばして胸を張り、顎を上げてマイクを口元にかまえた。


 ヘタクソでもいい笑われてもバカにされてもいい堂々と歌いきってやる。

 さあいつでもこい!

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